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君は小生の宝物/葬儀屋/黒執事

第5章 死神は御満悦




「(あ…あの……)」



「どうするかい?」



大真面目な顔をして話し出すからいったいどんな難しい話をされるのか一瞬身構えたマリアンヌであったが、アンダーテイカーの話した内容は“小生が最優先”というなんとも子供っぽく単純明快な内容であった。



どうしてもこの鳩を飼いたかったマリアンヌは、独占欲剥き出しにしている愛しい死神の条件をのむしかなかそうだ。


「(わ、わかりました…大丈夫です。)」



「それに、鳩君。ここの店の主人は小生だ。それに君を助けたのもこの小生。そんな君がここに居座りたいと言うならば、当然小生に忠誠を誓ってもらうよ。君がマリアンヌと仲良くできるのは、小生が満足するまで彼女を可愛がったあと、つまり二の次だ。それをきちんと理解できるならこの店に置いてあげるとしよう。」




「(……………)」  『……………』



鳩は思ったはずだ。



さっきまで、“小生は何もしていない、助けてあげたのはマリアンヌさ”などと言っておきながら、いざマリアンヌが自分を店に置いておきたいと言ったとたん、この死神は自身の権力を誇示するかのように助けてやったのは自分だと言い出した。



その潔すぎる手のひら返しに、もはや天晴と何も言い返すことができなかった。



こんな変態策士の口車に乗るのは気が引けたが、ロンドンの人混みにはもう飽き飽きしていたし、猫の類に襲われるのももう御免だ。

誰かの元でゆっくりと飼われるのも悪くないと思っていた矢先に現れてくれたのが、優しくてしかも美人なマリアンヌだったのだ。

自分は犬の様に常に尻尾を振って主人に尽くすような性格ではなかったが、鳥にだって人に仕え使役されていた長い歴史があるのだ。
鳩である自身の中にも本能として人に仕える能力は十分に備わっている。


鳩の方もマリアンヌと同様条件をのむしかなさそうだった。仕方がないとばかりにアンダーテイカーを静かに見つめた。


『…………』



「この沈黙は肯定と捉えてよさそうだね。」



「(えっと…それでは……)」



「可愛いマリアンヌのおねだりだ。この鳩を飼うの、許してあげるよ。」



大真面目だった顔の口元がいつもの弧を描いた柔らかい表情に戻ると、マリアンヌは一安心したのか思い切りアンダーテイカーに抱きついた。


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