第5章 死神は御満悦
鳩を拾ってきてからのマリアンヌは、ベッドに引きこもる事はせず、必死に看病に明け暮れた。
昼夜問わず数時間毎に流動食を与え、器具を消毒し、包帯を変えては薬を塗ってやる。
それ以外にも今まで担当をしていた炊事や掃除なども徐々にこなすようになっていた。
──そんな日々を送ること数週間──
身体を動かしきちんと食事を摂るようになったマリアンヌは、顔色や心理状態もみるみる回復してきたように見える。
アンダーテイカーは、ベッドに引きこもる駄々っ子の様なマリアンヌを少し名残り惜しいと思いつつも、元気を取り戻していく姿にホッと胸を撫で下ろした。
やはり命あっての愛しいマリアンヌだ。
そんな日常が戻りつつある午後、アンダーテイカーがキッチンのダイニングテーブルで紅茶を飲んでいると、バタバタと廊下を走る音が聞こえ、激しく扉の開く音がした。
──バタンッ!──
「ん?マリアンヌ?どうしたんだい、そんなに慌てて。」
そこには息を上げているマリアンヌの姿。
マリアンヌは息を上げながらも何やら喜んだ表情でアンダーテイカーに駆け寄ると、その手を取った。
「(アンダーテイカーさん!!こっちに来てください!)」
「えぇ?!今すぐかい?」
アンダーテイカーは紅茶の入ったビーカーを見せながら首を傾げた。
「(はい!今すぐです!)」
紅茶など後にしてくれと言わんばかりにマリアンヌはその手を両手で掴むと、グイグイと引っ張り店の方まで連れて行った。
「これこれ、いったいどうしたっていうんだい?」
すると、マリアンヌは鳩を入れてあるカゴを見るように促してくる。よくよく覗けば、鳩は回復してきたのか、固形の乾燥した穀物の餌をついばみ始めていた。
時折翼をバタつかせながら喜んで食べている。
「ほう、元気になったじゃないか。どれ、傷の様子を診ようか…」
餌に夢中になっているうちにとアンダーテイカーが包帯を外して傷口を確認すると、化膿もせずすっかり良くなっていた。
この様子ならもう大丈夫だろう。