第5章 死神は御満悦
「(あっ、あ、あの…鳩が、鳩が怪我しています!アンダーテイカーさんお願いです!助けてあげてください!)」
マリアンヌはアンダーテイカーの胸をドンドンと叩きながら急かすように必死に訴えた。
「ちょっ、ちょっと待っておくれよマリアンヌ…その鳩は…もう無理だ。」
確かに、この鳩のこの身体の大きさからしたら血を流しすぎているかもしれない。
でもマリアンヌはどうしても何とかしてやりたかった。
「(そんな事言わないで下さい…お願いです…私も手伝いますから…手当をしてあげて下さい…)」
「マリアンヌ…無茶を言わないでおくれ…」
アンダーテイカーは抱きしめて宥めようとしたが、その手は振り払われてしまう。
そしてマリアンヌは駄々をこねた子供の様に首を横に振りながら、遂には泣き出しだしてしまった。
「…困ったね〜」
こうなってしまってはアンダーテイカーでもお手上げだ。
鳥は飛ぶために骨の中が空洞になっている。
そのためとても脆い。その上エネルギーの消費量が高いから怪我や病気で食べられなくなればすぐに弱ってしまう。
それ故、鳥の類は怪我や病気の治療が上手くいっても死んでしまう可能性の方が高いのだ。
「(うっ…うぅ…お願いです…アンダーテイカーさん…)」
だが、このところベッドの中でアンダーテイカーを欲しがることしかしなかったマリアンヌが、1羽の鳩のためにこんなにも必死になっている。
今のマリアンヌの目には“なんとかしたい”という想いで溢れており、店を出るまでのあの虚ろげな様子はどこにもなかった。
「ふぅ…わかったよマリアンヌ。小生、やれるだけの事はやってみるからもう泣かないでおくれ。」
「(ほ、本当ですか?!あ、ありがとうございます!!そしたら早くお店に戻りましょう!)」
アンダーテイカーの言葉に希望を見出したマリアンヌは、瞳に熱いものをみなぎらせて怪我をした鳩の元に駆け寄った。