第5章 死神は御満悦
しぶしぶ頷いたマリアンヌに下着を渡すと、俯きながらつけはじめた。
しかし、アンダーテイカーが持ってきた服を見た時、かすかにマリアンヌが反応したのを見逃さなかった。
それは、春先にニナの店で仕立ててもらった秋用のワンピース。
色は真紅のベルベット生地。アンダーテイカーがリクエストしたものだ。もちろんマリアンヌだってあの時のやり取りを忘れているはずはないだろう。
同色のレースの丸襟が付いていて、腰のあたりにはサテンのベルトリボンがついている。色白でダークブロンドの髪の毛のマリアンヌにはとても良く似合っていた。
ボサボサになっていた髪の毛を梳かしてやろうとカーテンをあけると、マリアンヌはいきなりの眩しさにビクッと顔を背けてしまう。
「マリアンヌごめんよ。髪を梳かしてあげようと思ってね。」
アンダーテイカーは背けてしまったマリアンヌの頬を両手で包み込み自身の方に向けると、やはり顔色が悪い。
そのまま親指で目の下を下げてみると、そこは白くなっていた。
アンダーテイカーが予想した通り貧血を起こしている。
外出は短時間にした方が良さそうだ。膝を付き、気怠るそうにしているマリアンヌにガータータイツとショートブーツを履かせると、抱き上げるように立たせてやった。
ドレッサーに座らせ、髪を梳かしながら香油をぬってやれば、パサついていた髪はみるみると元の姿に戻っていく。
顔色の悪い頬と唇に薄く紅をさしてやると、鏡を見たマリアンヌはうっすらと微笑んだ様に見えた。
「(あ…あの…私…似合ってますか?)」
不安げに瞳を揺らしマリアンヌはアンダーテイカーに問いかける。
「ヒッヒッ、もちろんさ。よく似合っているよ。」
優しく頭を撫でてやれば安心したように柔かい表情を見せた。
「じゃあ久しぶりに少し外を歩いてみようかね〜。」
アンダーテイカーは買い物カゴをマリアンヌに渡すと、反対側の手を繋ぎ、店を出た。