第5章 死神は御満悦
心の傷を埋めるかのようにアンダーテイカーを求める生活は1ヶ月……そして2ヶ月と続いた。
当のアンダーテイカーはそんなマリアンヌが可愛くて可愛くて仕方がないと満更でもない、むしろ御満悦な日々を送っていたが、日を重ねるごとに少しずつ“誤算”が生じてきてしまった。
只々アンダーテイカーの愛を欲しがる事しかできなくなってしまったベッドの中の愛しい存在が、徐々に痩せてきてしまったのだ。
無理もない。
愛欲に溺れてろくに食事もしなくなってしまったのだ。アンダーテイカーの食事は決して不味くはなかったのだが、マリアンヌはそれ以上に自身に注がれる性の快感を渇望していた。
痩せてきてしまった上にろくに栄養が摂れていないせいか、体力も落ちてしまったのだろう。
アンダーテイカーとの交わりの最中でも、まだまだこれからという所で気を失ってしまう事も多くなってしまった。
そうなってしまえば、アンダーテイカーとてこのままでもいいとは思えなくなってしまう。
しかし、虚ろ気な目で熱っぽく自身の欲望を誘ってくる官能的なマリアンヌは、アンダーテイカーの中の男の支配欲を最高なまでに刺激をし、いつまででも寝室に閉じ込めておきたくなってしまっているのも正直な気持ちだ。
だが、いくらマリアンヌの愛を再確認できたからと言って、このまま痩せ細り、死んでしまっては本末転倒だ。
アンダーテイカーは本気で悩みだしてしまった。
ベッドに引きこもりひたすらに自分を求める官能的なマリアンヌと
笑顔で店の手伝いをする可愛いマリアンヌと
果たしてどちらのマリアンヌを今の自分が望んでいるのか……
珍しくも頭を抱えて悩んでしまった。
どちらも愛しいマリアンヌであることには変わりはないが、優先させるべきはマリアンヌの命であることは明らかだ。
そのためには少しでも外にだして、食事をさせ、心身のバランスを整えてやらねばならない。
「少し、外に連れ出してあげようか…」
アンダーテイカーはそう決めると、マリアンヌの衣装部屋から久しぶりに服を選び、それを持ってマリアンヌが眠る寝室へと向かった。