第4章 悪魔と、死神と、切り裂きジャック
「マリアンヌはね〜、ちょっと壊れちゃってね。しばらく店には出れなくなっちゃったんだ。」
「は?それはいったいどういう意味だ?」
怪訝な顔でアンダーテイカーを睨み上げると、セバスチャンがある事に気付きその身を屈めた。
「坊っちゃん、葬儀屋さんとマリアンヌさんは昨夜、大変激しくお楽しみだった様に思われますよ。」
シエルにニコリと笑顔を向けたセバスチャンの手には、昨夜マリアンヌが自ら脱ぎ捨てた下着が握られていた。
「な、な、な、な、何だこれは!!お、おい、なんでこんなモノが店の床に落ちている!?いったいお前達は何をしていたんだ!」
顔を真っ赤にしながらまくし立てるシエルに、アンダーテイカーは特に慌てる様子もなくユラユラと立ち上がると、セバスチャンの手にあるマリアンヌの下着を引ったくりポケットにしまった。
「マリアンヌと小生が何をしていたかだって?イ〜ッヒッヒッ…その情報はかなり高くつくけどお代は払えるか〜い?」
気味の悪い笑いでシエルに近づくと、アンダーテイカーは人差し指で彼の顎の下を厭らしくなで上げた。
「う、煩い、そ、そもそも僕はそんな事を聞きに来たのではない!!はぁ……頼みたいことがあってきたんだ。」
「そうだったね。いったい伯爵は小生に何を頼みたいんだい?」
少し間を置くと、シエルは重い口を開いた。
「切り裂きジャック事件の最後の被害者の後始末だ。1人は極少数だけで内々に葬儀を頼みたい。そして…1人は国外からの移民で遺体の引き取り手が見つかりそうにない。墓を建ててやってくれ…」
「今回ヤードは動かなかったのかい?」
「あぁ…僕とセバスチャンで切り裂きジャック事件は解決させた。これで女王の憂いもはれるはずだ…」
「伯爵が名もない娼婦のお墓を建ててあげるなんて優しいじゃないか……それに比べると、女王は嫌なことを全て伯爵に押し付けて高みの見物か〜なんだか気にいらないねぇ。」