第1章 狂愛【安室透】
「...さん。さん。起きてください。さん。」
(ん。誰かが呼ぶ声がする。あれ?私?どうしたんだろ?ポアロで...え!?)
『はっ!えっ!?』
がばっと起き上がり、辺りを見渡す。向かいの席で安室がニッコリと微笑みを見ていた。
安「おはようございます。もうお店を閉めたいのですが...。」
時計を見ると、本来のポアロの閉店時間より1時間過ぎていた。
『あー!!本当にすいません。またやっちゃった。』
は飛び起き、シュンと落ち込んだように謝った。
安「クスッ。全然いいですよ。予定もないですし、ぼくもいい思いをさせて貰いました。」
『本当にすいません。あーこれで何回目だろう。ご迷惑かけてすいません。』
そう。がポアロで寝入ってしまうのはこれが初めてでなく、いままでに何回もあった。その度に落ち込み、安室に慰められていた。
安「気にしないでください。はい。これを飲んだら送りますね。女性一人での夜道は危ないですからね。」
そういうと安室は、コーヒーをの前に置いた。
『なにからなにまですいません。最近寝不足なのかな?アポロに来ると眠くなるんですよ。安心するからかな?』
は彼が入れたコーヒーを啜りながら、そんなことを呟いていた。
安「大学がお忙しいんですか?確かに少し隈があるように見えますね。」
すっとの目元を撫でてやると、照れたように頬を赤らめ俯いた。その様子を見て安室はゴクリと唾を飲みこんだ。
『確かにもう少しで夏休みで課題やらレポートやらがたくさんあって大変ですが、寝てないわけではないですけどね。たまに徹夜してますけど。』
安「ストレスと疲れが溜まってるのかもしれないですね。無理しないでくださいね。」
『はい。ありがとうございます。コーヒーご馳走さまでした。やっぱり私にはまだ早いかな?苦味が強いような。でも、目覚ましにはちょうどいいかもしれないですね。』
安「コーヒーにもいろいろありますからね。これ洗ったら送りますね。」
そういうと安室は、キッチンに入りティーカップを洗った。も荷物をまとめ帰る準備をした。