第1章 叶わぬ想いを胸に
「はぁ…はぁ…団長……」
薄暗い部屋ではこの蒼い瞳がクレアのものであるかのように錯覚してしまう。
シャワーも浴びずに押し倒し、強引に唇を塞いでしまった。
いい歳した自分がこんなにも余裕を無くしてしまうのも、みんなクレアのせいなのであろうか?
なめらかな蜂蜜色の髪、蒼くて大きな瞳、透き通るような白い肌、華奢な身体。
初めて会ったときから少なからず興味はあった。
だが、クレアはリヴァイが初めて執着した女だ。それに口では否定をしていても、クレアだって同じ想いでいたことは、ずいぶん前から分かっていた。
最初はそんな2人を心から応援していたが、これがなかなか進展しない。
──リヴァイには特別な誰かが必要だ──
そう思い、一旦はリヴァイへの気持ちを優先させたエルヴィンであったが、ここまで焦らされてしまい業を煮やすと、あろうことか、自分の中に眠らせておいた密かな気持ちが再び熱をこもらせてしまった。
さっさと恋人同士になってくれれば諦めがついたものを……
運命の悪戯とはなかなか残酷だ……
調査兵団の団長として、リヴァイやクレアの上官として、メンツを保ちたかったが、出来心でクレアに触れてしまった今朝の一件でどうやら自分の欲望のタガが外れてしまったらしい。
一度でいいからどうしてもクレアを自分のものにしてみたくなってしまった。
しかし、それができないからここに来たのだ。
もうクレアに似た女を抱くことでこの気持ちを消化するしか解決策はなさそうだ。
多忙ゆえストレスが溜まっていたのだろうか。
このところ、女を抱くことがなかったからだろうか。
この歳で性の欲望が暴走するなど、エルヴィンは自分でも信じられなかった。
だが、娼館の女に自身を団長と呼ぶよういいつけたのだ。もうその時点で大した乱心ぶりだ。
自分をこんな無様な男にしてしまう程クレアの魅力は計り知れなかった。
いづれ近いうちにリヴァイとクレアは結ばれるだろう。
そうなることを祈る気持ちと、心底羨ましいと思う気持ちが複雑に葛藤し、エルヴィンはリンネの首元に噛み付くように舌を這わせた。
「はぁ…ん…」
ゾクリとくる感触にリンネの背中が微かにしなると、両腕をエルヴィンの背中にまわした。