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エルヴィン裏短編/滾る心の命ずるままに

第1章 叶わぬ想いを胸に


「アレも一式頼んだぞ。」

「はい、かしこまりました。」

タリアはニッコリと微笑む。

「エルヴィン様はいかがいたしますか?」

エルヴィンは少し考え込むように黙っていたが、数十秒後、考えがまとまったのであろうか。
床を見つめながら喋りだした。


「金髪で腰までの長い髪、蒼い目、小柄で華奢な身体付き、幼い顔立ちで、男慣れしていない若い女はいるか?」


エルヴィンは真顔で次々と要望をタリアに伝えた。
ここは兵舎ではなく、ミケ以外に聞くものはいない娼館だ。
多忙で溜まったストレスに拍車がかかり、タガが外れたのだろうか。普段の様子からは想像できないような細かな注文が次々と出てきた。いつも兵士たちに見せている爽やかな表情も、今はその欠片も無い。

「おい、エルヴィンそれって…」

ミケはエルヴィンがクレアに似せた女を注文しているのにすぐに気づいた。

「まぁ…ミケ、何も聞いてくれるな。笑うなら笑ってくれてもいい。」

エルヴィンは自虐的に笑うと手のひらで顔を覆ってしまった。

「エ、エルヴィン様?!あ、あの…」

いつもと様子の違うエルヴィンに一瞬タリアも困惑してしまった。

「あぁ、タリアすまない。どうかしてたな。なるべくでいい、私の要望に近い子はいるか?」

「は、はい。おりますが……」

「では……………で、頼む。」

「かしこまりました。お部屋にご案内致します。」


「エルヴィン、じゃあまた後でな。」

「あぁ、またあとで…」

2人は別々の部屋へ案内されていった。



─────────────

──コンコン──

エルヴィンが個室に案内されてから待つこと10分程。
扉がノックされた。

「入ってくれ。」

中からの返事を確認し、少し遠慮がちに扉が開くと、そこにはフード付きの長いマントを羽織った女が立っていた。

「エルヴィン様。ご指名ありがとうございます。お初にお目にかかります…………」

「名乗りなさい。」

ここでは呼びたい名で呼ぶ客もいるため、客の許可が無いと名前を名乗らない仕組みになっている。

「わたくしはリンネと申しますが、どうぞお好きにお呼び下さいませ……」

扉の前で深々と頭を下げている。


「こちらに来なさい。」

リンネは長いマントを引きずりながらベッドの前に立つエルヴィンの側まで歩み寄った。


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