第1章 叶わぬ想いを胸に
最初に通した受け付け室までエルヴィンを案内しながら、リンネは切なく心を痛ませていた。
ここは、店の特徴柄、とにかく叶わぬ想いを抱えた客が多い。
エルヴィンは最初はそのように見えなかったが、今しがたした情事では最後に「クレア」と絞り出す様な声で自分を呼んでいた。
クレアとはおそらくエルヴィンの想い人であり叶わぬ想いなのだろう。
娼婦として働いてきたリンネには恋も、叶わぬ想いも未知なるものでしかなかった。
そのためこんな容姿端麗なエルヴィンでさえも叶わぬ想いを抱えてるなど、世の中の色恋沙汰とはなんとうまくいかないものなのかと、不思議でならなかった。
──コンコン──
「失礼致します、エルヴィン様でございます。」
部屋に入るとすでにミケが出された物を飲みながらエルヴィンを待っていた。
「エルヴィン様、本日は誠にありがとうございました。私はこれにて……」
「あぁ、無理をさせて悪かった…こちらこそありがとう。」
リンネが出ていくと、ミケが悪そうな笑みでエルヴィンに問いかけた。
「その顔だとすっきりしたみてぇだな。」
「まぁな。ミケもいつも通りか?」
「あぁ。彼女は最高だよ。」
──コンコン──
「失礼致します、エルヴィン様、ミケ様。」
そんな会話をしていたらタリアが入ってきた。この店は表から入り、裏口から出ていくという仕組みになっているため、タリアは2人を見送りにやってきたのだ。
「リンネはいかがでしたか?」
「あぁ、最高だったよ。また指名すると彼女に伝えておいてくれ。」
「ありがとうございます。かならず申し伝えます。」
「ではタリア、また世話になるかもしれない。その時は宜しく頼む。」
「またのお越しを心よりお待ち申し上げております。」
裏口の玄関まで見送られると、2人は兵団に向かって歩き出した。
「おいエルヴィン、お前はリヴァイを応援してたんじゃなかったのか?」
ミケにはエルヴィンが焦れながらも2人のことを応援している様に見えてたため、そう思うのも無理はなかった。
「その通り、応援してたさ。だがクレアがあまりにも可愛くてね……今朝は一瞬魔がさしてしまったんだ。今日は付き合ってくれて感謝するぞミケ。」
「フン、団長様も魔がさす時なんてあるとは驚いたな」