第2章 小さな命
それから何日かたったある日。
俺は久しぶりに店に行った。
マスター「いらっしゃい、久しぶりだな」
裕太「うん、ロケで地方に行ってたんだ」
そうかと答えるとマスターは、俺がいつも座る席を指差した。
マスター「退院した日から、毎日ここに来てるんだよ」
その方向を見ると、ひとりの女性がこちらを見ていた。
「やっと会えた」
それはだった。
長かった髪をバッサリ切り、黒く染めていたから最初は気づかなかった。
裕太「君は……」
の前に座るとマスターが、今度はちゃんと聞くんだよとに告げて戻って行った。
裕太「何の事?」
「凄くお世話になったのに、あなたの名前すら聞いてなかったから………」
あの日気づいたら俺がいなかった。
両親に俺が病院まで連れて来てくれたと言うと、ぜひお礼をと言うが、名前すら知らない。
そこで毎日ここに通っていれば、いつかは会えるだろうと思ったらしい。
「私もちゃんとお礼が言いたかったんです」
裕太「お礼なんて……」
「だってあなたは、この子の命の恩人だから」
そう言うとそっとお腹に手をあてた。
俺達はお互いの名前を伝え、また後日彼女の両親に会うことを決め、その日は別れた。