第1章 姉妹
(……えっ!!)
聞き捨てならないセリフにコバトの意識が急激に現実に戻る。
「うちより”ちょっと”立派だからびっくりするよ~」
「みゃってください!」
思わず噛んでしまったが、恥ずかしがってる場合ではないと、かまわず続ける。
「”ふたり”とはどういうことですか?」
「?コバトも行くのだよ」
さも当たり前のように父が告げる。
「私も……ですか」
ガツンと後ろから殴られたかのような衝撃が胸に響く。
落ち着けようと口をつけようとしたカップの中に波紋が浮かぶ。
姉とあの人が歩くところを見なければいけないのか。
否、いくら姉といえども妹をデートには連れて行かないだろう。
近くにいても見ることすらできないのか。
見たからどうということはないということはコバトの頭にはなかった。
「コバトも来月社交界デビューだろう。帝都で箔をつければきっと良い家に声をかけてもらえると思ってね」
恰幅の良い腹を撫でながら上機嫌にクローフは言った。
クローフの言うとおり、来月誕生日を迎えればコバトは社交界に出ることができる年齢になる。
そして、結婚相手を探すのだ。爵位存続のために少しでも良い家との縁を結ばなければならない。
それが貴族の娘として生まれた宿命だ。コバト自身もそれはわかりきっていたことだったため、異論はない。
帝都に行ったとなれば、父の言うとおり”今”よりずっと社交界で注目を浴びるかもしれない。
(でも、帝都に行ったくらいでは、私を選んではくれないでしょうね。あの人は。)
ピージオの方に目を向けると、ちょうどこちらを見ていた彼女と視線が混ざり合う。優しく微笑む姉。
ただ微笑んでいるだけなのに、なにか含みがあると思ってしまうのは、自分にやましいことがあるからだろうか。
「出発は3日後。護衛は頼んでいるから道中は安心だよ。」