第1章 姉妹
クローフがピージオから聞いたという話はこうだ。
ダミュロン・アトマイスが見聞を広げるため帝都ザーフィアスに旅立って数か月。
帝都で騎士になった彼と手紙で親交を深めるピージオ。
しかし、日を増すごとに会いたいという気持ちが募り父に相談した。
娘の突然の告白に驚いたものの、可愛い娘のため帝都行きを手配した。
そこまで話して、気がすんだのかようやく一息つくクローフ。
(姉さまいつの間に手紙のやりとりなんて。全然そんな素振りなかったのに。)
まだ見ぬ帝都きっとファリハイドよりも立派なのだろう。
噂に聞く結界が広がる空の下。
ファリハイドよりも立派な石畳。
勢いよくしぶきを上げる噴水を取り囲むように植えられた色とりどりの花。
通りを行き交う人々の中でも特に目を引く男女。
美しい姉とその手を取り暖かい笑みを浮かべる青年。
もし、そのまま二人がうまくいけば、次に会う時には、
(義兄さまとお呼びしなければいけないでしょうか)
自身の想像に落胆する。
「心配しなくてもいいよ。向こうには父さんの古い知り合いがいてね。昔こっちにも遊びに来てくれたんだけど、コバトは赤ちゃんだったから覚えてないかな~。ふたりのことは彼に頼んであるから」