第1章 姉妹
「実はこのピージオがダミュロン君ととても仲の良いオトモダチなのだよ!」
どうだと言わんばかりにクローフは鼻を鳴らす。
「はい」
しかし、娘の反応は父の思いに反してつまらない返事だった。
クローフは驚きのあまり平時の対応しかできないのだろうかと考えた。
そして息を吸い込みやり直す。
「さっきはうちと付き合いないと言ったけどね。実は、”あの”アトマイスの息子とピージオがとてもとても仲の良いオトモダチなのだよ!!!」
「……はい」
一瞬、ほんの一瞬、何を言われたかわからないような顔をした娘だったが、返事はさきほどと同じだった。
「あ・の・ア・ト・マ・イ・ス・だよ!」
同じ内容を繰り返すごとにヒートアップする父に冷静に返事するコバト。
「あ・の・ア・ト・マ・イ・ス・と君の姉がオトモダチだなんてすごいことだと思わないかい!!」
(すごいといえばすごいのかしら? ファリハイドにはダミュロン様と仲の良いオトモダチの女性はたくさんいらっしゃると思いますけど)
反応の薄い娘に顔を赤くし「アトマイス」と繰り返すクローフ。横で小さくため息をつくピージオ。その表情は語る、本当にしかたないわねえ。と。
「コバト。お父様はコバトに驚いてほしいのよ」
クローフのムキになる声に重なったがその声ははっきりとコバトの耳に届いた。
「と、突然のことで驚いてしまいまして。あの、ええと、とっても……ビックリです」
姉の言葉で自分の過ちに気づいたコバトは驚きの言葉を告げる。自分でもわざとらしかったかなと思ったそれにもかかわらず
「そうだろう。そうだろう。あのアトマイスだからねえ」
と、意にも介さない様子で喜んでみせるクローフ。
その姿はイタズラが成功した子供のようにも見える。