第2章 姉妹2※
「いつも女の子得意って言ってたよね!!」
「おまっ! なんつー人聞きの悪い……」
真っ青な顔で駆けつけた男はソムラスの口をふさぐ。
(どうしよう! 皆さん困ってらっしゃるわ。なんで私の思うようにならないの)
男たちが困惑の声を上げている中、必死にこらえようとするが、全く思うようにならない。
涙は次から次に溢れ、嗚咽が言葉の邪魔をする。
「ちょいと失礼」
声がかかったとほぼ同時に世界が回った。
コバトは木々の間からこぼれる光を受け止めすぎないよう目を細めた。
周りから冷やかしともいえるような歓声が上がった。
いつまでも裸足の女の子を立たせておけないだろとボヤくような言い訳に口笛が返される。
浮遊感がどうにも落ち着かなくて手を伸ばした先は男の首だった。
「びっくりさせてごめんな」
コバトにしか聞き取れないだろう近すぎるバリトン。
金属音とともに振動が膝裏から伝わった。
ゆっくりと進む景色。木漏れ日は幾重に重なり合う木の葉に遮られた。
飲み込む空気の温度がいくらか下がるが、上がった体温は当分下がりそうにない。
「変なこと言われてびっくりした?悪い奴らじゃないんだ。みんな君に笑って欲しかったんだよ」
コバトが俯いていた顔を少し上げれば、ちょうどこちらを見ていた男と視線が交わる。
まっすぐな翡翠色に耐えきれず、さっと顔をそらす。
ずっと見ていたいのに見ることができない。矛盾が辛くて痛い。
いわゆるお姫様抱っこという状態の中、そらしたそれは自然と男の肩にもたれかかる結果となった。
残念なことに鎧が固くて少し痛い。
鎧越しの男の香りに心臓がさらにペースを上げる。
(ああ…もう……)
カチャ
(私重くないかしら)
カチャ
(わ、私臭くないかしら! あぁ! スカート泥だけで!)
コバトの心の内に鎧のぶつかる音が相槌を打つ。
「はい、とおちゃ~く」
長いようで短い時間。男のふざけたような声が終わりを告げる。ゆっくりと下ろされたその場所は、彼らが乗ってきた馬車の荷台だ。
「名残惜しいのはわかるけど、手離してくれるかな?」