第2章 姉妹2※
いつかと願った光景がそこにはあった。
そう、いつか。
大人になって、綺麗になって、強くなって。
そうして、彼と並んで。
あんな風に笑いあって。
けれども、彼の笑顔の向こうには彼女がいて。
コバトは彼の方を見ているのに。
(自分の頭の中でも報われないのね、私)
「ちょっと君、大丈夫ですか」
近くからかけられた声に自分のことだろうかと顔を上げる。
ぽたりと頬を伝った雫が落ちる。
(あめ?)
男越しに空を眺める。枝木で見えにくいが降っているようには見えない。
「どこか痛むのですか?」
コバトを見て、男がかがみこむ。
(痛い? そういえばなんだか重苦しいような)
言われてみて、みぞおちのあたりの違和感に気づく。
とはいえ、心配するほど深刻なものでもない。
「な…で…えぐっ」
なんでもないです。ご心配にはおよびません。
令嬢らしく優雅に紡ぐはずだった言葉はただの嗚咽になった。
「お嬢さんどこか怪我を!」
男がコバトを気遣うように背に触れようとして手を止める。年頃の少女に触れることをためらうようかの行動だった。
コバトたちの様子に気づいた何人かが集まってくる。
キャナリの仲間たちだ。野次馬心ではなく、彼らが心の底からコバトを心配していることがわかる。
(早く大丈夫って言わないと)
焦れば焦るほど涙がこぼれ、嗚咽がひどくなる。
涙を拭こうにも両手は泥だらけ。留まるすべを持たない熱いものが泉のごとく湧き上がる。
その姿に声をかけた男がさらに慌てる。
「お、おいっ! ソムラスお前の方が年近いだろう!!」
「近いって……そりゃみんなよりはだけど」
集団の中で比較的、年若い青年が突然の指名に眉をひそめる。
「あー泣かないで、ねっ」
コバトの前でひきつった笑顔を見せる青年。
もちろんそんなことで止まるはずもなく、頬を伝った雫は顎から地面に吸い込まれていく。
「全然ダメだな」
「女心をわかってない」
「マイナス100点」
周りのダメ出しに落胆の色を濃く出す。
「ちょ、ちょっと、マイナスって何さ! 女心なら……ダミュロン!」
名案と言わんばかりに、明るい声を上げる。