第2章 姉妹2※
(えっ?)
眉をハの字にした困り顔がコバトの思ったより近くにあった。
状況を改めて確認する。少なからず想いを寄せる相手の首に手を回し抱き着く自分と
そんな自分に抱き着かれたまま無理な姿勢の想い人。少し高い荷台に体を傾けるのが辛そうに見える。
(あ゛ああぁぁー!!!)
辛うじて声は心の中に抑えた。電撃を食らったかのような勢いで離した手は収まりどころが決まらずあわあわと宙を漂う。突然の少女の奇妙な動きに面食らったように目を見開いた男だったが、すぐに気を取り戻し、丁寧にコバトを台に座らせる。瞬間、足を折り曲げ、尻餅ついたままの姿勢でコバトは後ずさった。虫のような動きはベチっと壁に突き当たって止まった。
人差し指で頬をかく男。少し間をあけて言った。
「いや、そんな離れなくても」
臭かったかと呟きながら腕をあげスンスンと鼻をならし首をかしげる男。
「ごめんなさい!」
間髪入れずに謝罪の言葉がコバトの口から飛び出した。頭の中がごちゃごちゃになっているうちに自然と涙も嗚咽も止まっていた。
「いやいや、そんな……」
「ごめんなさいっ」
三つ指ついたコバトはこれ以上は床にめり込むというほどの勢いで頭を下げる。
「……」
男はコバトを一瞥すると黙る。
また男の意に背くことをしてしまったのだろうかとそろりと顔を上げて様子を伺うコバト。
知らずこちら見ていた男とばっちり目が合ってしまう。瞬間、かっと血がのぼった。
(あーもう! 私ったら学習能力がないの!)
耳まで赤く染めたコバト。男は口元を片手で抑えてそれを見ていたが、やがて耐えられないというように吹き出す。
「あはははっ!! いいよ、いいよ。大げさだな~。コバトちゃんは」
思いもかけない男の言葉にコバトは目を大きく見開いた。
ひょいっと軽い身のこなしで荷台に乗り込む男。とりあえずこっち来てと手招きされて、コバトはそれに素直に従った。ためらいがちに”少し”男から離れて荷台のふちに腰掛ける。こそっと男との距離を測りつつ位置を縮められないかと、ついた手に体重を預け、その刺激に手を浮かした。ここにきて自分が怪我をしていたことを思い出したのだ。
手を諦めて下半身の筋肉をすべて使い、ほんの気持ちほど男に近づいた。