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【TOV】水鏡の波紋

第2章 姉妹2※


大きく息を吐き、魔物をにらみつける。

コバトの強い眼差しに魔物は荒い呼吸を返す。
傷を負って慎重になったのか。
怯えるばかりの弱い獲物の変わり様に警戒したのか。
こちらの様子を伺うかのように低い姿勢を保つ。

ジリジリとした緊張感が支配する。

コバトのこめかみから一筋、汗が伝う。
両者一切動かずに続くにらみ合い。

「はぁはぁ……」

始まってからまだそれほど時間は経っていないが、コバトの息も荒くなってきた。

(襲ってこない? このまま時間が稼げれば……)

ちらりと後ろを気にしてしまった。
時間さえあれば、姉と男が立ち直って助けてくれるかもしれないと淡い期待を寄せてしまった。

突如、魔物が天に向かって大きく吠えた。

天を揺るがすような咆哮に膝が折れるコバト。

魔物はそれを見逃さなかった。
後ろ足で勢いよく地面を蹴り、距離を詰める。助走がない分加速はないが、動けない彼女相手には十分だ。その鋭い爪がコバトに振り下ろされる。

鼻先に触れるか触れないかに近づく

(おかあさ…)

それがさっと風を残して消えた。

(あっ)

突如耳をつく轟音。そちらに目を向ければ魔物が馬車を横倒しにしていた。

追い打ちをかけるように風を切る音が鳴る。

グギャァァ!!

立ち上がろうとした足を数本の矢が貫いていた。

それでも立ち上がろうと体をふらつかせる。
大きく口を開き、天に向かって吠える魔物。2、3回首を振ると地に伏した。

吹き飛んだ魔物と逆のほうを見れば、弓を構えた女。
女は構えたままの姿勢で慎重な足運びで魔物との距離を詰める。

魔物はびくりびくりと震えていた。
徐々に震えが小さくなり、やがて止まった。
いつの間にか血だまりができていた。

女は構えをとくと、口元に弧を描く。
それを合図に張り詰めた空気が和らいでいった。
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