第1章 太宰さんがサボる理由を知った日
「だ、太宰さんッ!?いつの間に、というか気付いて、!」
「うふふっあんなにも熱烈な視線を受けて気付かないほど、私は鈍くないよ。」
楽しげに笑う姿は先程とは違い、いつも通りの太宰さんだったが、やはり何かを隠している気がした。
「それにしても、随分大量の駄菓子だねぇ…乱歩さんからのお使いかい?」
「あの、太宰さんはどうしてここに……?」
質問を質問で返してしまったが、ニッコリ笑う太宰さんはそれさえも予想していたのだろう。
“そうだねぇ、”と言うと太宰さんは、“秘密。”と言って唇に人差し指を当て、妖艶に囁いた。
その時に太宰さんが浮かべた笑顔は妖しくもとても幻想的で、女の人にモテる理由が分かった気がした。
なんてことを考えているうちに太宰さんはいなくなっていた。
僕の隣では国木田さんが“また逃げよって…ッ!”と悔しそうに呟き、怒り心頭といった様子だが、
僕は太宰さんが去り際に少しだけ残していった花の匂い。
その匂いはいつも太宰さんの外套から香る匂いと同じで、
何となく、よくここに来てるのかな、なんて思った。