第1章 好きなのに。
「1つ、提案があります」
そういう中島くんの目は少しも笑っていなくて
少し体が震えた。
「俺と...浮気しませんか?」
「.....え?」
意味がわからなかった。
この人はいったい何を言っているのだろう?
浮気....私と?
「あの...どういう意味で?」
「今見てたでしょ?その教室にいるの...俺の彼女」
その声からはなんの感情もよめなかった。
でもこれだけはわかった。
―この人は、感情を殺しているんだ―
その瞳からも、表情からも伝わってきた。
そして気づく
私たち....
「俺たち同じでしょ?」
悲しみを殺して
悲しいという感情に慣れてしまっているんだ。