第2章 土曜日
「母なる海ってやつですかね。」
隣の美咲は、波のように静かな口調でぽつりと呟いた。
母なる海、か。そう考えるとやっぱり海は全生命の故郷なのかもしれない。
「生命は海から来たって言うしね。」
じゃあやっぱり、帰って来た気分になるのは何もおかしくないんだな。
美咲はどんな風に思うんだろうか?落ち着く?はしゃぐ?それとも?
「生命ってどうやって来たんでしょうね。クロール?」
・・・しんみりとした話をしていると言うのにコイツは。
「クロールって強いな。上陸した生き物ってもうちょっと魚類っぽいやつでしょ?せめて平泳ぎじゃない?」
「バタフライで来てたらかっこいいなー。」
「案外背泳ぎだったりして。」
「じゃあ生命の上陸は自由形って事で。」
「それ実質クロールじゃね?」
あまりのくだらなさに2人して笑った。近くの中学生が何だ?って目でこっちを見ていた。
美咲のムードブレイカーな所は、時々困ったものだけど。
こんな話をしていると、センチメンタルになるのも馬鹿らしくなっちまうから不思議なもんだ。
「くしゅん!」
「寒い?車戻ろうか。」