第2章 土曜日
一通り遊園地を楽しんだ俺達は、車に乗り込み海を目指した。
空は赤く染めあげられていて、この様子だと海に着く頃には真っ暗になってしまいかねない。アクセルを踏み込んでスピードをあげた。
「あー!恥ずかしかったー!」
「うおっ!?」
美咲の突然の大声に驚いて、ハンドルを左に傾けてしまった。車が少し横揺れする。
「あっぶねー。何だよ急に大声あげて。」
「だってー!」
多分隣では美咲が顔を赤くしているんだろうけど、運転している俺はそれを見る事が出来ない。
とにかく運転に集中しようとしている俺なんて気にも止めない様子で、美咲は俺の太ももをべしべし叩いた。
「後ろのお母様!笑ってたもん!」
美咲の言う「後ろのお母様」は、観覧車で俺達の1つ後ろのゴンドラに乗っていた子連れの女性の事。
俺達が濃厚なキスをした後にふと後ろの窓に目を向けると、子供の目を両手で塞いでいる女性がそこにいた。
漫画のように子供の目を塞いでいる様も面白かったけれど、その時の「あらあら、お若いわねぇー!」と言った具合の笑顔と言ったら。
「まさかあの人も、俺達が子供に言えないような関係だとは思ってないだろうなー。」
「だからそのネタ止めてくださいってば!」
恐らく顔を赤くしている美咲は、相変わらず俺の太ももをべしべし叩く。
「美咲も叩くの止めなさい。危ないんだから。」
「はーい・・・。」
しょげた美咲は、俺に背を向けるように体勢を変えた。