第2章 土曜日
「・・・いやー。」
「すごかった・・・。」
ジェットコースターを下りた俺達は、少々魂が抜けた状態で歩いていた。
思ったより激しかったジェットコースターは、俺を満足させるのに十分のクオリティーだった。
「5回も落ちた!5回も!」
常に安全バーにしがみついていた美咲は、目尻に涙を溜めて俺に訴える。
「泣く程じゃないでしょー。」
「怖かったもん!」
ぷいっとそっぽを向かれてしまって、俺は苦笑を浮かべるしか出来なかった。
ちょっといじめ過ぎたかな?
いやでも、せっかくの遊園地なんだから、やっぱりアトラクションで楽しまなきゃ。
「ごめんって。クレープ奢るから。許して?」
本当!?とキラキラした目で来るかと思ったけど、美咲は予想に反してそっぽ向いたまま。
・・・本気で怒らせた?一抹の不安が俺の脳裏をよぎる。
「どうすれば許してくれる?」
顔を覗き込んで尋ねると、まだ目尻に涙を浮かべる美咲と目が合った。
「・・・そうじゃなくて。」
ようやく開いた口はか細い声を漏らす。
「ジェットコースターで、手ぐらい握って欲しかったの・・・。」
今浮かんでいる涙は、恐怖でなく恥ずかしさから来るものだと気付くのに時間はいらなかった。
ちなみに美咲の言葉から俺が手を繋ぐまで、その時間わずか0.1秒。