第2章 土曜日
「あたし、絶叫系は本当にダメなんですよね。」
美咲はジェットコースターの看板を見ながら眉間に皺を寄せた。
看板の向こうからは、きゃーっ!と盛大な悲鳴が聞こえて来る。
「えっ?あんなに遊園地を楽しみにしてたじゃん。」
「遊園地デートって響きに憧れてただけです。」
げんなりしてきたらしい美咲は、俺の腕に寄りかかるようにしがみついた。
遊園地と言えばジェットコースターなんかの絶叫系がメインだろうに、それがダメだなんて不憫な子。
「エレベーターのふわっとする感じでもイラッとしますもん。」
「マジで?」
こりゃあ重症だ。フリーフォールなんて乗せた日にはどうなるんだろうか。
これはぜひとも検証せねばなりませんな。
「言っとくけど、俺はここで優しく気遣ってあげるような紳士じゃないよ?」
俺はすぐさまジェットコースターの列に美咲を引っ張り込む。
「紳士じゃないのは知ってましたけど!やだー!」
なんて失礼な事を言ってくれるんだ。これはお仕置きが必要だな。
「ひゅーんっ、体がふわっと浮かぶんだぞー!」
「酷い!酷い!大貴さん酷過ぎる!」
いくら俺をぽこすか殴っても、端から見たらただのバカップルだ。
そんな事をしているうちに、俺達の後ろに「ジェットコースター楽しみ!」なんて叫ぶちびっ子が並んでしまった。
退路を断たれた美咲は、見栄もあってか大人しくなった。
「大丈夫だって。こんな小さい遊園地のジェットコースターだよ?しょぼいに決まってるって。」
「でも落ちるもんー!」
文句たらたらの美咲のもとに、恐怖のジェットコースターがやって来た。