第2章 土曜日
ドキドキした。
心臓がきゅうっと甘く潰れた。
俺の肩に頭を置いた美咲は、そのまま俺を引き止めるように腕を回した。
「ドキッとした?」
囁くような声は、俺を試しているのか、それとも。
「・・・したよ。」
どうして今、そんな事をするの?
どうして今、そんな事が出来るの?
聞きたい事は山ほどあっても、どれも口にすることは憚られて。
肩に置かれた重みを、柔らかい髪を撫でる事しか、臆病な俺には出来なかった。
美咲の頭が少し動いて、肩に頭を乗せたまま俺を見上げる形になった。
「今日はデート、でしょ?」
そのままにこっと効果音付きで笑うと、美咲はすぐさま離れてさっさと車から下りてしまった。
「早く早くー!」
お店の前で手招きする美咲を見て、俺はため息混じりに車のドアを開けた。
俺の甘えんぼな弱点は、本当に。
あぁ、また新たなツボが出来てしまった。
肩に置かれた幸せは、とてつもなく癖になってしまいそうだった。