【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
数十分後。私は数人の兵隊さんに囲まれ、腕を捕らえられていた。
「捕まえたぞ!!」
「何でこんなにすばしっこいんだよ……」
ううう。敵(クソ尾形)の企みは分かっていたのに、結局、彼の計画通りになってしまった。
なりふり構わず町中を逃げ回ったが、小さな町な上、私は着物だ。
鍛えられた兵隊さんには叶わなかった。
ちなみに逃げるついでにクソ尾形を探したが、影も形もなかった。
次に会ったら絶対に殺す!!
「どうするんだ?」
「見張りをつけて宿に留め置けとの鶴見中尉殿のご命令だ」
「さあ来てくれ、お嬢さん。乱暴なことはしないから」
兵隊さんたちは、一応は丁寧だ。
言うことを聞いていればひどい扱いは受けないだろう。少なくとも今は。
でも、その先はどうなる?
八方ふさがりだなあ。
そろそろゲームオーバーの字が点滅しそうな気がする。
そのときだった。
「大捕物をしているというから見に来たが、大の大人が娘一人にずいぶん大げさではないか」
声がした。一瞬、尾形さんが戻って助けに来てくれたのかと思ったが、違った。
野次馬の群れを抜けてこちらに歩いてくるのは、ご老人二人組であった。
だが単なるご老人ではないことはすぐに分かった。
老人の一人は、洋装というハイカラな格好だった。
だがそれ以上に雰囲気が、常人のそれと異なっていた。
兵隊さん達は野次馬かと思ったのか、
「何だ、おまえらは」
「この娘は家出して捜索願いが出されている。分かったらとっとと散れ!」
だが老人お二人は歩みを止めることはない。
そしてハイカラな方のご老人が腰に手をやる。
そこに年代物の刀が見えた。
え。待って。この時代、とっくに廃刀令が出てるはず――。
「鶴見中尉の名を出したが、彼から私のことは聞いていないのか?
――なら三下か。楽に済んで助かる」
ハイカラ老人が静かに言った。
「……貴様」
兵士さんたちが銃を構える。
そしてもう一人のご老人が私に言った。
「お嬢さん、着物を汚したくなければ伏せていなさい」
言われる前に、私は身をかがめていた。
死ぬ!!――本能でそう思ったのだ。
直後、私の頭上で血と肉が舞うことになる。
耳と目を固く閉じていた私は、それを見ずにすんだ。
今日は厄日だなあマジで。