【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
とりあえず話題を変えることにした☆
「それより尾形さんこそ、軍を抜けてまでやりたいことって、何なんですか?
普通に除隊すれば良かったんじゃないですか?」
「話すほどのことじゃねえよ」
終わり!!
「…………」
「…………」
そのまま沈黙。でも密着していて確かに暖かい。何か、うとうとしてきた。
尾形さんが優しく髪を撫でてくれるのを感じる。
暖かい。私は安心して、ゆっくりと眠――。
……。
…………ん?
「あの、尾形さん。私を温めて下さるだけじゃなかったんですか?」
私の声が低くなってるのは、気のせいではあるまい。
尾形さんは気まずそうに沈黙していた。私は続けて、
「第七師団の追っ手を警戒してる最中に、ずいぶんと余裕ですね」
「……生理現象だ。仕方ねえだろう。男ってのはそういう生き物なんだよ」
開き直るなや。
どういうことかと言えば殿方の一番大切な部分が、硬度を増しているのだ。
まあ密着してれば、普通に胸を押し当ててる状態になりますしなあ。
「収まりつきますか? どこかで処理してきますか?」
離れようとしたが、スッと抱きつかれた。おい。
「……梢」
耳元でささやくな。背中を撫でるな。あんた、さっきは偉そうに説教しておいて!
「なーるほど。確かに軽く扱われるわけですね。追っ手がどうこう言ってたじゃないですか」
私は鼻で笑うが、
「向こうだって、ヒグマがうろつく夜の山中を疾走するほどアホじゃねえよ。
動くなら日が昇って見通しが利くようになってからだ。
焚き火はそのときの目印になるから、消すと言ったんだ」
男め。小難しい理屈を並べやがって。
「梢。おまえはどうなんだ?」
「は?」
暗闇で、尾形さんの顔が見えない。
「選択肢くらいやるよ。嫌がる女に無理強いするほど俺は悪趣味じゃねえ」
うーん……。
てか、カッコ良く言ってるけどさあ。尾形さん、もう着物の中に手を入れちゃってるし。
襦袢(じゅばん)の上から胸を愛撫されると、この前のことが蘇ってくる。
「んー」
「どうなんだ? 梢」
「どうなんですかね?」
すると深々とため息。
「本当に、分からない女だ」
そう言って尾形さんは、私の胸をはだけさせたのであった。