【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
「いや、親に勘当されかけてまして! そのうち無一文になるから! ホントに!」
言いつくろっても、もう完全に遅かった。
「梢さん。やはりあなたの才能を埋もれさせるにはあまりに惜しい。
第七師団が後ろ盾になりましょう。その優秀な情報収集能力と情報分析力を活かす場を、あなたに与えたい」
私、中身は普通だから! てか歴史を変えるつもりはないから!!
だがこのままだと強引に第七師団に連れて行かれそうな気がする。
もう仕方ない! 強行突破で逃げよう!!
「あ。えーと家のことは瀬戸際というほどでも無かった気がします。あと数時間前のことはちょっと記憶があいまいで覚えていません。あとは適当に答えました。ホント!!
では家が心配なので、帰ります。ごちそうさま――」
立ち上がり、身を翻そうとするが。
「女性が一人でお発ちになるには少し遅すぎる。お送りしましょう」
読まれたようにパシッと手をつかまれた。
いつの間に動いたんだ。
見下ろされるようにされ、声が自然に震える。
「なら月島さんを呼んで下さい。鶴見様自らがお送りになることはありません」
「月島軍曹は、丸山一等卒より伝達事項を聞いている最中でしょう。どの道、ここからは離れすぎている」
怖いよ。にたりと笑うの怖いよ。
「美しい……」
「はあ?」
ヤバ。素が出た。だが鶴見中尉はそっと私の頭に手をやっていた。
……あ、ああ、椿(つばき)ね。鯉登少尉がさしてくれた椿ね!
わわわ分かってたからね!? ホントだからね!?
「だがどれだけ花が美しくとも、いや大輪であればあるほど、それを支える枝葉は丈夫でなければならない」
「は、はあ」
「梢さん。お一人のあなたには支えが必要だ」
鶴見中尉はそっと私を抱きしめた。
だが私はカッとなった。もういい加減に切れた!!
必死にもがき――全然動けないけど! ガチギレ状態で、
「そんなの、いらないですよ。私は今までだって一人だし、これからも一人でやってきます!
私は金づるになったり、あなたの下で働いたりする気はありませんよ!?」
すると鶴見中尉はフッと笑った。
「才女であるかと思えば、歳相応に可愛らしいところもある。彼らが手玉に取られるのもよく分かりますな」
と、私の頭を撫でた。
失礼なっ!!