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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第4章 月島軍曹1



 眠い……超眠い……夜の運動したものな……。

「梢!! いつまで寝ているのだ!! さっさと顔を洗ってこい!!」

 うおわ!! 爆睡していたのに起こされた。
 目を開けると鯉登少尉であった。すでに着替えておられ、剣呑な顔で私を見下ろしていた。

 あ、あれ? さっき寝たと思ったらもう朝……?
 障子の外からは朝の清浄な空気が流れてくる。
 マジか。月島さんはとうにいないし!!

「てか寒い!!」

 私はガバッと布団を頭までかぶり、安らぎの中に避難した。すると鯉登少尉が布団をつかみ、はがそうとする。

「梢っ!! 若いおなごが、そんなだらしないコトでどうする! 嫁のもらい手がなくなるぞ!!」

 うっせえ!! 百年後じゃその発言、ハラスメントなんだからな!?

「ゴホっゴホ、申し訳ありません、音之進様……どうも肺の調子が悪化したみたいで……」
「都合の悪いときだけ病を装うな!……おまえ、実は鍛錬不足なだけの健康体だろう、梢!!」

 むしろ何で今まで気づかなかったのか。
 つか昨晩、部下に一服もられたのに元気だなあ、鯉登少尉。
 態度からして、本気で昨晩のことを何も知らないらしい。
 月島軍曹、怖ぇ。

「きっと温泉の効能ですね……ゴホ!」
「いいから起きろ!」
「火鉢を持って来ていただければ、起きられる気がいたします。あと着物と半纏四、五枚お持ちいただけると」
「朝からどれだけ重ね着するつもりじゃ!! その腐った性根、叩き直してくれるわ!!」

 意地でも布団に籠城しようとする私。引き剥がそうとする鯉登少尉。
 ぎゃあぎゃあ騒いでいると、

「二人とも騒ぎすぎです。お静かに。それと少尉。女性の寝室にみだりに入るものではありません」

 ……いやあんた、どの口で。

 襖(ふすま)から顔をのぞかせた月島軍曹は、いつもと全く変わらぬ仏頂面であった。
 昨晩のアレやコレやの余韻はゼロ。

 とても上司の命令で夜這いした挙げ句、たらし&就職スカウトと、トンデモ行動三連発かました人とは思えん。

 ……あ。目をそらした。ちょっと耳が赤い。やっぱ多少は後ろめたいようだ。
 なお鯉登少尉の方は、
 
「ほら梢。朝食が出来ているぞ」

 わたくし、枕にひしとしがみついて、

「持って来て下さい」


 はたかれた。

 
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