【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第4章 月島軍曹1
「……すみません。先ほどから失礼なことばかり」
今さら感はあるけどね!
でも月島さんは慌てて布団をかけて下さる。
私はちゃんと枕に頭を乗せ、ワザとらしくあくびをした。
私について、これ以上追及されたくない。話はこれきりという意思表示だ。
月島さんは隣の部屋に戻るかと思ったが、私の隣に横になった。
「梢さん。今日のことは、本当に……」
だーかーらー。合意なんだってば。そこまで謝られると無理やりされた気分になるでしょうが!
月島さんは背中から私を抱きしめる。
意図せず足が絡まり、ちょっと恥ずかしい。
腕に包み込まれると、やっぱり暖かい。
さっきまで肌を重ねていたことを思い出される。
だが寝る前に釘は刺さねば。
「大丈夫です。でも鶴見中尉には、作戦は失敗だったとちゃんと伝えて下さいよ?」
ぼっちの女に男をあてがえば、ほいほい言うことを聞くと思ったか? なめんな。
「今回のことは父には言いませんし、お庭のお客さんとしてなら引き続き歓迎します。
でも資金援助とか、そっちで働くとか、そういうのは絶対にしないですからね?」
月島さんは苦笑し、私をぎゅっと抱きしめる。いたた。
「ええ、ええ。確かにお伝えします。梢さんは聡明すぎるようだ。
私も、我々の戦いにあなたを巻き込みたくは無い」
……ええと、日露戦争終わってるんだよね?
なら彼らは何と戦ってるんだ?
尾形さんと敵対してるらしいし、軍人同士で何で内輪もめしてんだろう。
でも大事に抱きしめられ、徐々にまぶたが重くなる。
まあいいか。
月島さんはまだ寝ないのか、私に口づけながら、頭を撫でていた。
私も決意する。
やっぱり、変に別の時代の人と関わるべきではなかったのだ。
今後はあの庭から一歩も出ず、明治時代に行くのもやめておこう。
百年前の人たちとの危険な関係は、これを機に完全に絶ってしまおう……。
「梢さん……」
ああ、でも。
誰かに抱きしめながら眠りに落ちるのは、こんなにも安心出来るものなんだ。
なぜか、目から一粒涙がこぼれる。
それは頬を濡らす前に、誰かが優しくすくいとってくれた。