【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第4章 月島軍曹1
酒臭い。
暗闇の中、そう感じて目を開ける。しかし身体が動かない。
これは金縛りというやつか。甘い。最近では身体がちゃんと覚醒しないためだと、科学的に説明がついておる。私はだまされないぞ。
「梢さん……」
ふむ。確かに心霊現象ではなかった。月島さんだ。
だが何をしている。
よりにもよって、一番自制心ありそうな月島さんが。
私はよくよく自分の状態を確認する。
両手首つかまれ、足で軽くこっちの両足おさえられてる。
ハリツケ状態であるが、決して私が痛くないよう、力を制限されてる感がある。
だが身体が全く動かぬ。
つか風呂場でもガタイがいいなーと思ったけど、ホントに力ありすぎだろ、この人。
月島さんの表情は暗くて分からない。
寝ぼけてるのか? 女を買いに行ってくれ。深夜だけど。
「つーきーしーまーさーん」
正気に戻らせようと、低い声で呼んでみた。
「すみません……梢……さん……」
唇にやわらかいものが触れた。何だ確信犯か。
……だから酒臭いって。
片方の手が解放された、かと思うとそっとその胸が私の胸に触れる。
形をなぞるように優しく――でも、襟元からそっと中に忍び込もうとする。
「うーん……」
私は自由になった手で自分の頬をかいた。
これ、けっこうのっぴきならない事態では?
原因は? さっきの深酒に加え、温泉で見せまくった私の醜態。『自分に気がある?』と思わせちゃった?
そもそも現代でさえ、嫁入り前の女が男と旅行したら『同意』の証拠と取られちゃうしなあ。
月島さんも月島さんで、いつもお疲れだもの。たがが外れちゃった?
……私、何でこんなにのんびりしてんだろ。
「月島さん、ダメですって。こらー」
抵抗すべく月島さんの頭に触れた。
おお、坊主頭がジョリジョリしてて触り心地が――いやそんな場合じゃないって!
「……んっ……」
でも何を刺激してしまったのか、がばっとキスをされた。
舌で唇をこじ開けられ、ぬめる舌が口に入ってくる。
何だろう。ごく最近、これと同じようなことを誰かとしたような。
そう思ってしまうと、何だか悪いことをしている気がして、軽く身をよじってみた。
だが身体は縫い止められたみたいに、ピクリとも動かなかった。