【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第4章 月島軍曹1
夕食では北海道の郷土料理がたっぷりと振る舞われ、楽しくお食事をしたのであった。
その後、布団を敷いてもらった。
私たちは婚約者+付き添いの使用人という設定で泊まってる。なので大きい部屋に二組、襖を隔てた別の部屋に一組敷いてある。
もちろん私が別の部屋の方で寝るのだ。
その後、大浴場から戻ってきた月島さんは、火鉢の前に陣取っている私に、
「どうします、梢さんは部屋付きの温泉に入ってきますか?
それとももうお休みに?」
「うーん……寒いですし」
そうなんだよ。
完全に失念していたけど、この時代にドライヤーなんて便利なものは無いんだよね。湯上がりは冷えそうだ。
「だからさっさと入れと言っただろう。ぐずぐずしておるから!」
なぜドヤ顔なんだ、鯉登少尉。あんた三回は入ってたな。
まあ仕方ない。
この時代の人たちに毎日風呂に入る習慣は無いので、風呂に入らず寝るのは、おかしなことではない。
「今日はもう寝ることにします」
「分かりました。ゆっくり休んで下さい。では――」
月島さんが続けようとしたとき、『失礼いたします』と部屋に仲居さんが入ってきた。
「月島様。小樽の鶴見様という方よりお電話が――」
『何!?』
最後まで言わさず月島軍曹と鯉登少尉は顔色を変える。
「梢さん、先にお休み下さい!」「鶴見中尉殿!」と二人は部屋を飛び出していった。
……月島軍曹への電話だろう、何であんたまで飛び出すんだ、鯉登少尉。
「まあいいかあ。寝よ」
襖を開け、吸い寄せられるようにお布団へ――。
「うーん……」
私はピタッと止まった。
…………
…………
「はああ~」
夜の雪景色を見ながら、私は岩陰で肩まで湯につかっていた。
超気持ちいい。超ぬっくい。温泉最高!
ダメだった。やはり身体を洗う誘惑には叶わなかった。
日頃の疲れが癒やされる~。いや、あまり疲れてないけど。
「タオルはたくさん持って来たし、あれでどうにか乾かして……」
と作戦を練っていると、部屋風呂の扉がガラッと開いた。
「おお! こぢんまりしているが、良さそうな風呂ではないか!」
「鯉登少尉、あまり大声を出されると梢さんが起きてしまいますよ」
全裸の男性二人が入ってきた☆