【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第4章 月島軍曹1
ぬっくい。
静かだ。
中庭からは時折、雪が落ちる音が聞こえる。
……眠い。
結局私は、まだ部屋風呂にも入らず暖を取っている。
時々月島さんとポツポツ世間話的なことを話す他、静けさだけが通り過ぎる。
スマホもテレビも本もないから、これといってすることもない。
のんびりするなあ~。
で、やっぱ眠――。
「……梢さん!」
「うおわ!!」
ガクッと盛大に前のめりになったところを、月島さんに支えられた。
や、やべえ! 火鉢に顔から突っ込むところだった!!
「すみません……! 温かくて気が抜けちゃって」
「やはり急に気候が変わったからご負担だったのでは?
早めに布団を敷いてもらいましょう。囲炉裏のそばで横になりますか?」
ものすごい心配されてる!!
「大丈夫大丈夫、大丈夫です!! 起きてますからー!
月島さんこそ温泉とか入ってこないんですか? それとも音之進様が戻るのを待つんですか?」
「…………」
茶菓子に供された羊羹(ようかん)に手を伸ばしつつ、まったりしていると。
「その……梢さん、一つ、うかがってもよろしいですか?」
「え?」
いきなり月島さんの声のトーンが低くなった。
ま、まさかお庭のこと? それとも私が明治の人間じゃないって気づかれたとか!? そこらへん私にも説明出来ないよ。財団の人に聞いて!
私は冷や汗ものだったが、月島さんも顔色が悪かった。けど彼は思い切った様子で口を開き、
「梢さんは……その、鯉登少尉と……お……おつきあいをされているとか、そういったことは……」
「え? 別にそんなことはないですよ!? えー!? そう見えるんですか!?」
私がアッサリ答えると、月島さんは目を丸くする。一瞬だけ口元がゆるみかけるが、すぐ引き締まった顔になる。
まだ半信半疑といった様子で、
「そ、そうなのですか!? 失礼ながら、ずいぶんと打ち解けて親しげに見えましたし呼び方も――」
「ああ。初めて会ったときあまりにも偉そう……コホン、威厳がおありだったのでつい」
鯉登少尉かあ。
初めて会ったとき、どんなだったっけな。