【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第4章 月島軍曹1
明治時代の軍人さんが庭にいっぱい遊びに来て、脳の処理能力オーバーになり倒れそうになったわたくし。
「女性お一人のところに長居して申し訳ない。いずれ何らかの形で御礼をいたしたく思います」
と鶴見中尉殿。礼はいらんからとっとと帰れ。
でも休んでいた兵隊さん達も、武器を点検したり伸びをしたりして、撤退準備っぽい。
やったー!
一方月島さんは、私を縁側に座らせ、
「梢さん、もう何もなさらず結構です。我々に構わず、どうぞおやすみ下さい」
変わらず心配そうにしてる。いい人だなあ!
ふ。男の好意につけこむ女は好きでは無いが、ここは乗っからせていただくか。
「月島さん、ありがとうございます……ゴホッゴホ、ですが皆さんは勇敢な兵隊さんです。
肺を病んだ私に出来ることがあるのなら、それだけで十分嬉しいことなのです。ゴホ、ゴホ!」
「……梢さん!」
動揺して背をさすってくれる月島さん。
い、いや気持ちは嬉しいけど、そこまで悲壮な顔にならないで下さいよ。今日明日、死ぬわけじゃないんだから!
ほら! 部下の人たちが何か勘違いして、『あ~、軍曹殿はああいう子が好みなのか』ってヒソヒソ言ってますが!?
「身体が弱いという割に、さっき全員分の水筒を満タンにし、一度に運んでこなかったか?」
鯉登少尉のくせに冷静なツッコミをするな!!
……ちなみにこの方はずーっと会話に加わりたそうに、鶴見中尉殿と私をチラチラ見ていた。
でも中尉殿は私とずっとお話してたからなあ。
「梢さんは我々のために気丈に振る舞って下さったのでしょう。さ、もう座敷の方へ」
月島さんは私の手を取り、奥に下がらせようとする。
すると反対の手を、鯉登少尉がつかんだ。
「いや日光浴が足らぬのではないか? 梢は色が白すぎるのだ。身体が虚弱ならなおさら、縁側で日を浴びていた方がいい」
いやあなた、なぜいつも上からなんですか。
あいにくと令和は、日焼け止めせず日光浴していいご時世じゃあないんだな!
「……『梢』?」
ん? 今、月島軍曹の声がちょっと低くならなかったか?
「何か問題でもあるのか? 月島軍曹。梢は私の茶飲み友達だ」
フンッと、偉そうな鯉登少尉殿。
……友達かなあ。