【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第9章 うちの庭が明治の北海道につながっていた件
前回までの詳細なあらすじ。クソ尾形に逃げられました。
……もとい。私は網走(あばしり)監獄に行けば、なぜか元の時代に戻れるらしいのです。
でも現在、私は第七師団に保護?されてる身なので完全自由行動が出来ません。
そこにたまたまやってきた尾形さん。
二人で一緒に網走に行こう、という話になりかけたけど、彼も追われる身。
私たちの再会はほんの十数分で終わり、再び引き離されてしまったのでした。
というわけで私は未だ旭川で、不本意ながら第七師団の世話になり続けているわけです。
あとスマホが手に入りました。歴史を変えたら大変だから、特に使う予定はないけどね☆
…………
…………
さて夏も近い第七師団司令部にて。
「梢! どうしたのだ、そんな大荷物を抱えて!!」
廊下で会った鯉登少尉は、慌てて駆け寄ってくる。
私が山のような書類を抱えていたからだ。
「相変わらず軟弱だな。よこせ!」
「ああ、何をなさいますか! ご無体な!」
「どこで覚えたのだ、そんなはしたない物言いを」
ツッコミ入れつつ、書類を持って下さる鯉登少尉。
「この書類を全て梢が処理するのか?」
「まさか。ただ単に運ぶってだけですよ」
雑用梢さんでございます。
すると鯉登少尉は苦虫を噛みつぶしたようなお顔で、
「全くあの馬鹿中佐どもが。杉元たちに良いようにだまされる奴らに、おまえの価値など分からん!」
でも私も混乱に乗じて逃げようとしたけどね。
「音之進様……じゃなかった、鯉登少尉様。声が大きいですよ」
すると鯉登少尉、唇をとがらせ、
「名前で呼べ」
「司令部ではそうは行きませんよ。あと――その、杉元さんたちはその後どうなったんです?」
どうしても気になって聞いてみた。
「……大雪山までは追ったらしいが見失い、それきり行方が分からんそうだ」
「そうですか」
大雪山を越えたなら、もうこっちに戻ってくることはない。当たり前。当たり前だ。
「…………」
鯉登少尉は何か言いたげだが、何も言わない。
彼はあの日、私が逃げようとしたことを一度も追及してこない。
「梢――」
鯉登少尉が何か言いかけたときであった。
「鯉登少尉殿!」
下士官の人がこちらに駆けてきた。