【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第3章 ラッコ鍋(尾形編)
尾形さんが身体を起こした。
どうも本気でヤルっぽい。そりゃそうか。そうだよね?
鼓動が鳴り止まない。
よく考えなくても、とんでもない状況になっている。
緊張状態で少し頭のほてりが冷め、冷静になってきた。
なってきたが、逃げられない!
私は相変わらず鍋の匂いに蒸せそうになりながら、畳でマグロと化していた。
そして隣で、敵がガチャガチャとベルトを外す音を聞いている。
でもたまらなくなって、彼のズボンをキュッとつかむ。
不安で、ちょっとでもいいから、慰めてほしい。
「……お、が、たさん……」
肌を桜色に上気させ、もどかしくて身体をもじもじさせている。
すると彼は座り直し、少し優しめに、
「だから待てって言ってるだろ?」
「……っ! あ……ひっ……」
こら! 片手でベルトを外しながら、片手でアソコに指入れてくるな! 何か腹立つ!
でも狙ったみたいに気持ちいいところをグリグリされ、『んっ……あん……』と馬鹿みたいな声が出てしまった。
奴はそんな私を、極めて冷静に観察し、空いた手で頬杖をついた。
「本当に俺が初めてか? 梢。それとも――」
「あ、あ、あなたが、初めてに、決まってるでしょう? お、怒りますよ?……ひゃ、あ……」
指をぐりっと曲げられ、身体がビクンと震えた。
「ははっ。怒るな。悪かった。初めてでこうも慣れているのは珍しいと思ってな」
……珍しいと評価出来る程度には女性経験があるってことか?
いかん。考えるな。彼は一世紀以上前の人間なのだ。現代の常識を押しつけるべきじゃない。
でも……でもムカつく!!
「こら梢」
「ん……っ!」
手を押さえようとしたがアッサリ逃げられ、逆に気持ちのいい場所を指先でくすぐられた。
つい声を出すと、今度は頬を撫でられ、キスをされた。
無意識に舌を出し、甘えてしまう。チョロすぎだろ私。
そして、しばらく舌の絡む音が響き、
「もういいようだな」
「……え……」
あ、いや、いつまでもこの状態はちょっとアレだけど、でも何て言うか、その……。
「暑ぃな……俺も脱ぐか」
尾形さんは手でパタパタあおぎ、自分のシャツのボタンを外した。