【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第3章 ラッコ鍋(尾形編)
障子の向こうから昼日が見える。
静かなはずの和室には、嬌声のような嗚咽(おえつ)のような変な声が響いていた。
「……っ、……っ!……おが、た、さん……」
声の主は自分だ。足を開かされ膝を押さえられていた。
そして別の手に、下着の隙間から指を入れられている。
緩急をつけて『入り口』を解されているのだ。
「……ゃ、……んっ……!」
そうは言っても、初めてのことだ。
気持ちよさの中にかすかな痛みがあり、そのたび正気に返りそうになる。
「梢」
泣きそうになると、読んだみたいに身体を起こし、キスをしてくる上等兵。
舌をたっぷりと絡め、再び甘い雰囲気にすれば、また準備の再開だ。
「……ぁ、は、ぁ……っ……ん……」
でもたっぷりと時間をかけて解されるうちに、悔しいけど徐々に身体が慣れていく。
身体が火照り、もっと欲しくなる。
「指が三本入っている。分かるか?」
「……ん、んん……っ」
分かるし、自分の身体が悦んでいることだって分かる。
羞恥で尾形さんを見ていられず。腕で顔を覆う。
「可愛いことをするじゃねえか」
下半身の刺激が引いたかと思うとバッと腕をつかまれ、押さえ込まれた。
「俺を見ろ、梢」
「は、はい……」
命令された。快感に流されそうになりながらも、交わろうとしている男を見た。
……ゾッとした。
さっきの痛みより、今の恐怖で正気に戻るところだった。
尾形さんの目。光が見えない。
およそ、これから結ばれようとしている愛しい女を見る目ではない。
獲物を前に、舌なめずりする肉食獣そのものだった。
――これは、本当に愛のある交わりなんだろうか?
熱に浮かされる中、どこかでそう思ったが。
「!!」
覆い被さってきた! 体重をかけられ、お、重い!!
「お、尾形さん?」
でも抱きしめられ、身体を密着させられ、嫌でも気づかされた。
一見、冷静ではあるが、彼のズボンの前はガチガチに硬くなっていた。
体温が高い。かすかに息が上がっているのも分かる。
「梢」
顔に手を当てられ、もう一度、キスをされる。
頬にも、首筋にも、鎖骨にも。
でもさっきの目を見た後では、愛のある行為というよりどこか匂いづけのように思えた。