【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第8章 第七師団
そしてしばらく進み、
「鶴見中尉殿!!」「鯉登少尉殿!!」
第七師団の人たちの声がした。
ようやく合流出来たらしい。
「水筒を持っている者はいるか?」
鶴見中尉の声がする。
「そこをどけい! 梢を寝かせる!」
鯉登少尉の声も。
……でも、さっきより頭が……クラクラして……。
「梢。水だ。飲みなさい……梢?」
声が――遠く――。
…………
目を開ける。木漏れ日がきれい。
「梢!! 気がついたか!?」
真上の鯉登少尉が嬉しそうだった。
私は涼しげな木陰に寝かされていた。
え? やだ。気を失ってたの!? 恥ずかしすぎる!!
脱水は気がつかないうちに進行しております。水分はこまめに取りましょう……。
「す、すみませ――!!」
ガバッと起き上がろうとして、くらっと来て背中を支えられる。
「馬鹿者! すぐに起き上がるな!」
本日三回目!! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!!
「ほら。もう自分で飲めるだろう?」
鯉登少尉に水筒を寄こされ、ぐーっと一気飲み。はああ。染み渡る。
そこでハッとする。
第七師団の皆さん、完全に待ちぼうけであった。周囲を警戒したり、馬の相手をしたり。
何人かと目が合い、大慌てでそらされる。
あああ!! 何という大失態!!
「すみません、とにかくすみません!!」
申し訳無さで謝り倒していると、
「落ち着け、梢。鯉登少尉も必死に介抱していたのだ。彼のことも労ってやりなさい」
鶴見中尉に言われた。
「あ、ああ、そうですね。どうも本当にありが――」
そこで首を傾げる。さっき『もう自分で水を飲めるだろう?』と言われた。
「音之進様、どうやって私に水を?」
不思議に思い、鯉登少尉を見上げると、
「……気にするな」
鯉登少尉、耳まで真っ赤だ。サッと口元をこすっている。
…………。
皆が目をそらした理由はそれか!!
やったんですか!? 皆が見てる前でっ!?
ああああああ!!
羞恥で目を合わせることなど不可能。両手で顔を隠しぶるぶる震えてると、
「……可愛いな」「いやもう無理だろ。あきらめようぜ」
第七師団の人たちがボソボソ話してる声が聞こえる!!
さんざんな旭川行きであった。