【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第8章 第七師団
丸め込まれそうになるが、聞けば聞くほど変な話じゃないか?
私を利用する気は無い。でも助けてくれるし世話をしてくれる。
いや絶対におかしいて。絶対裏があるって。
……でも私は頭が悪いので、想像がつかん。
えーと、えーと……。
「梢。そろそろ寝たらどうだ?」
「いえそれはそれとして、その機械、返して下さいよ。私のなんだから」
鶴見中尉が熱心に巻いている充電器を取ろうとして、さっとかわされる。
「待ちなさい。この調子でいけば最後のランプがもう少しで点灯するはずだ」
すごいな。手動だけで満充電行くとか。どんだけ回してたんすか!
「いえ返して下さいってば」
くっそ、前側からだと、上手くかわされるな!
私は中尉の背中に回って、肩越しに手ぇ伸ばしてじたばた。
「梢、止めなさい」
そう言いつつも、中尉殿は私の無礼な行為に怒りもせず、むしろ楽しそうだ。
……私、こんなに鶴見中尉に馴れ馴れしかったっけ?
首を傾げる。さっきまで怖がってなかった? 警戒してなかった?
己の手の平返しがとっさに受け入れられず、固まっていると、
「梢。もういいのかね?」
――はっ!! ずっと鶴見中尉の背中に寄っかかったまんまだった!
これじゃ甘えてるみたいじゃないか!!
つか、額当てが近い。そういえばこの下って、どうなってるんだろう。
言えば見せてくれそうな気がするが、怖すぎて言い出せない。
なぜだろう。私は何となくおんぶの姿勢を続け、中尉殿の軍服の飾り紐をいじくる。
「止めなさい、梢。ほどけてしまう」
そう言いつつも怒らないな。ずっと苦手意識を持ってたけど、実は優しい人?
……あかん。私は鶴見中尉のファンクラブに加入する気はないからな!!
大慌てで己を戒める。
「これは君が所有を放棄したものだ。なら拾った私に権利が移ったと思わないかね?」
う……痛いところを。
「で、でもこれが何の機械かあなたには分からないでしょ?」
「そうだな。私と君との間にある歳月の溝は決して埋められるものではない。
だが、答えさせてはくれないか?」
鶴見中尉が肩越しに私を見る。
ものすごい自信ありげに見えるんですが……。