【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第3章 ラッコ鍋(尾形編)
熱がおさまらない。気を抜けば尾形さんを見てしまう。
ヤバい。これホントにヤバい!
1、2、3、4、5……。
頭の中で数を必死に数え、沈静化しようとする。
「これも脱ぐか」
尾形さんが上着を脱ぎ、その下のシャツのボタンを外す。
その仕草に唾液を呑み込み、無造作に放られた軍服に気づいた。
「あ、わ、私、ハンガー――衣紋掛(えもんかけ)に干しますね」
「悪い」
気を紛らわすため、受け取った制服を観察する。
いつもカーキの外套をすっぽり被ってるから、よく分からなかった。
肩章に『27』、紺絨(こんじゅう)に五つ釦(ぼたん)。
袖の黄絨三本線は上等兵だったっけか。尾形さん、すっごいなあ。
大日本帝国陸軍の本物の軍服。
二十一世紀に生きてる自分が、現役で使われてるものに触れるなんて。
あ、やばい。こっち側に見とれてしまった。
だがおかげで、気がそれた。
そうだ、理由をつけて少し部屋の外に出よう!
別に私が同席する必要はないんだし、鍋は尾形さん一人に食べてもらえばいい!
そうしようそうしようと軍服を持ち、尾形さんに背を向け、立ち上がりかけたとき。
「!!」
後ろから抱きつかれ、軍服が落ちた。
「お、尾形さん……!! は、離して下さい!!」
「いいのか?」
耳元でささやかれ、ぞわっとする。
「俺を誘ってきただろう?」
「はあああ!?」
「さっきからずーっと、発情したみたいな目で俺を見て。視線だけでヤラれるかと思ったぜ」
「は!? 何を馬鹿な――っ!?」
逃げようとして、スッと足払いをかけられた。
「わ!!」
バランスを崩し、倒れると思ったが身体を支えられ、静かに畳の上に横たえられた。
だが気がつくと四肢を押さえつけられ、押し倒されている。
あんまり力を入れてる感じじゃないのに、こちらはピクリとも動けない。
「尾形さん……止め、て……」
首を左右に振るが、狡猾(こうかつ)な山猫は、私を畳に貼り付けにさせ逃がさない。
「本当に止めていいのか?」
「……っ……! あ、あ、当たり前じゃないですか……!」
だが大きな手に耳元を撫でられ、ビクッとした。