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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第8章 第七師団



 何で鶴見中尉と遭難してるか、ざっくり説明すると、

1.皆で馬に乗って旭川行の道中、突如、覆面の人たちに囲まれる
2.銃撃戦!
3.鯉登少尉たちが盾になる形で中尉(と私)を逃がす
4.その後なんやかんやで迷いました

 ざっくりすぎるっ!!

 けど私は完璧に足手まといで、鶴見中尉にしがみつくくらいしか出来なかったから、うろ覚えなんですよ。
 銃で撃たれかけたとき、鶴見中尉が私を抱きかかえて馬から飛び降りたこと。
 街道を離れ無我夢中で逃げたことくらいしか覚えてない。

 で、今は夜である。追っ手は振り切った。多分。
 
「梢。手を離さないように。私の靴跡を踏んで歩きなさい」
 暗くて見えんがな。でも出来る限り指示通りにする。

「でも鶴見様、山を下りてませんか? こういうとき下りない方が良いのでは?」

 遭難したとき『下に下りるな』とは尾形さんもインカラマッさんも言ってた。
 下りで滑落して足を折ればその場で詰むし、そうでなくても下りるほど現在地が分かりにくくなるとか。

「連中もそう踏んで上を探す。裾野の方が隠れる場所も多い」

 そっか。単なる遭難とは違うんだよね。
 鶴見中尉は野外に慣れた将校さんだ。お任せするしかない。

「梢。疲れてないかね?」
「いえ大丈夫です」
「野営出来る場所を探している。もう少しの辛抱だ」
「はい」

 ちゃんと説明して安心させてくれるのはありがたいな。
 月明かりと靴裏の感触を頼りに、歩を進めている風な鶴見中尉。

 手が大きいなあ。『大人』な人とこんなにしっかり手をつないで歩くのは、子供のとき以来だ。

 ん? どこかで水の音がした。川!?

「鶴見中尉様、水音がしますですよ!」
「うむ。だが水場に近づくほど道が緩む。滑らないよう気をつけなさい」

 はいはい! 登山教室再びかい。どいつもこいつも素人扱いして……素人だけど!

 そして慎重に歩を進め、やっと開けた場所に出た。
 幸い、沢や谷では無く緩やかに流れる川だった。

「喉が渇きましたね」
 そういえば朝から水も食料も口にしていない。

「もう少し我慢しなさい。まだ周囲をちゃんと確認していない。
 開けた場所は遠くから見つかりやすいし、川べりで滑ったらあっという間に流される」

 はいはいはーい。

 子供扱いだなあ。マジで!

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