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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第8章 第七師団



 そして鶴見中尉は手綱を握る。
 
「梢。しっかり捕まっていなさい。行くぞ!」
「ちょっと待っ――うわああ!!」

 そして私たちは、小樽帰還組の敬礼を背に、旭川に向けて出発した。

 ひいい!! 揺れるっ!!

 もう恥も外聞もなく、大慌てで鶴見中尉の腰に捕まる。

 横座りで馬に乗るってバランス取りづらいな!!
 またがってないから、下手するとズルッと下に滑り落ちますよ、これ!!
 美しい北海道の景色を目に焼き付ける暇もなく、私は怖がって、しがみつくだけで精一杯。

 筋骨隆々たる軍馬はさっそうと街道を走る。
 後ろには旭川に向かう少数精鋭の人たちが続く。

「梢ー!!」

 私を呼ぶ声に、顔を上げた。
 鯉登少尉だ。さっきまで落ち込んでいたが、ようやく気持ちを切り替えたらしい。
 真剣な面持ちで鶴見中尉の後ろにつく。
 そして未だに馬上で戸惑っている私に、
「梢! そう強くしがみついては中尉殿のお邪魔になる!!」
「そうだな。もう少し力を抜いて欲しい」
「あ、はい!」

 二人に言われ、慌てて力を緩める。それくらい、鶴見中尉にひしとしがみついていたようだ。
 慌てる私を見、鯉登少尉はフッと笑う。

「安心しろ。落ちても私が受け止めてやる!!」

 ……白い歯がキラリと光った幻覚が見えたような。
 月島さんと離れたせいかな。だんだんといつもの調子が戻ってきたみたいだ。
 未だ罪悪感に苛まれながらも、そのことにホッとする。

 道中、ずっと気まずかったらどうしようと思ってたけど、これなら楽しい旅になりそうだ。
 そう思って自然と笑みがこぼれた。


 銃声が聞こえるまでは。


 …………

 …………

 …………

 そしてその夜のこと。

「どうしてこうなった……」

 私は両手を顔に当て、うめき声を上げる。

「どうしてこうなったあああ!!」

 パニックに陥る私に、後ろから声がかかる。

「梢。錯乱していないでついてきなさい。大声を出せば敵に気づかれるぞ」

 だが『しー』と指を口に当てる中尉殿は、全く常と変わった様子がない。
 
 あのね。何かね。襲撃受けちゃってね。

 私、今、鶴見中尉と二人でね。

 山中を遭難してる最中なんだ!!
 
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