【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第8章 第七師団
旭川出発前夜に、何か押し倒されてます。
どうにかして、この場を切り抜けねば。
鯉登少尉がいる旭川道中も、軍都と呼ばれる旭川でも、単独での逃亡は難しいだろう。
月島軍曹を殴って気絶させてでも、今夜中に――と、理屈では分かっているのに。
「ん……っ……は、ぁ……」
うん。まあ、現実には月明かりの中、あえぎ声が止まらない状態っす。
下着の中に手を入れられ、容赦なく指を動かされ、愛液が止まらない。
「ダメ、ですって……」
とにかく抵抗しようと、ぐぐっと肩を押してどかそうとするんだけど、小柄な癖に重い。
「梢さん、落ち着いて下さい。大丈夫ですから……」
いや違う。性急にコトを運ばれないか不安がってるんじゃないから!
頭を抱き寄せ優しくキスをしてくるな!!
「だが、これでは高価な服が汚れてしまうか……腰を上げて下さい」
「え? あ、はい……」
言われたとおりにする。
量販店で買った洋服だけど、明治時代じゃ高級服扱いなのか。
で、腰を上げたらそのままスルッと下の衣服を脱がされた。
あー、下半身がすーすーする……じゃない!!
……うん。馬鹿だね、私。抵抗しなかったし。
「俺も失礼します」
軍曹は私に一言詫びて起き上がり、ベルトを外すと詰め襟の上着を脱いで椅子にかけた。
シャツだと身体の線が多少浮き上がり、鍛えられた背筋がよーく見える。
やっぱ力では抵抗無理だわ。彼が背を向けている間に、そーっと逃げようとしたんだけど、
「梢さん、駄目ですよ」
背中から抱きつかれた。いやふざけてないから。
……力押しが駄目ならどうする?
「月島さん……ひとりぼっちでさみしいとき、尾形さんに言い寄られ、あなたを裏切ってしまいました……。
私は、もうあなたにふさわしい女では……」
秘技『他の男の名前を出す』!
私はしおらしく袖でまぶたをぬぐう。が、月島さんは優しく私の手を取り、静かに言った。
「そんなこと気にしないで下さい。俺こそ元死刑囚で、あなたにふさわしい男ではない」
「けど私は……――え!? はあぁ!?」
とんでもないことを雑談のついでみたいに曝露され、思わず『素』が出たのだった。