【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第8章 第七師団
「……」
「お久しぶり、です」
「…………」
「先日はとんだご迷惑を」
「………………」
「ええと……」
気 ま ず い 。
月島さん、何で無言で立ってる!!
怒ってもいいから、何か言って下さいよ!!
そもそも、前回あんだけ手間暇かけて元の時代に返してもらったのに、あっさり明治に戻ってきてしまった。
そもそも、今の私は第七師団的にどういう立場なんだろう。尾形さんの共犯者? 被害者?
あと、この時代的に私は天涯孤独の文無しになったわけだが、鶴見中尉は私をどうする気なんすか?
聞きたいことは色々あるんだけど、すぐ近くに鶴見中尉もいるし……というか追いかけなくていいのか?
鶴見中尉、振り向いて誰もいなかったら、すぐ戻ってくんじゃね?
質問もツッコミも色々あるけど、月島さんが何を考えてるか分からない!!
ビクビクしてると、月島軍曹がこちらに一歩踏み出した。
「梢さん」
「は、はい!!」
布団をつかみ、ビクッとして大声を出す。
月島さんはドアの方をチラチラ確認しながら、身を乗り出すようにし、小さくささやいた。
「あのとき……俺を助けてくれたのは梢さんですか?」
「は? あのときって?」
「……夕張で――」
夕張?
「ああ!」
ポンと手を打つ。いやでも、あんな粉じんの中で、どうやって大声出せたんだとか、あの光(スマホのライト)は何やねんとか聞かれても困る。
熱で頭が働かないが上手くごまかそう。
「えと、あの炭鉱爆発のとき、私は外にいました。
あなたの避難誘導が出来るわけないじゃないですか。気のせいですよ」
「…………。ええと、そうですか」
月島さん、一瞬だけ、ものすごーく何か言いたげになったが軍帽を被り直す。
そして私の肩を抱いたかと思うと、
「――――!」
唇を重ねてきた。
驚いて目を見開いた一瞬。
――月島さん、後ろ! 後ろー!!
ドアがちょっと開いてる!! あなたの上司が隙間からのぞいてる!!
一瞬、私と目が合ってニヤッとした!!
けど、月島さんはすぐ顔を離し姿勢を正した。顔が少し赤い。
「失礼致します」
と、私に頭を下げ、ドアから出て行った。
いや遅いって。見られてるって。
ツッコミたいけど、もやもやするしかない私であった。