【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第8章 第七師団
前略。一度、令和に戻れたんだけど、なぜかまた明治にUターンいたしました。
現在また元の時代に戻るべく四苦八苦中です。
あと尾形さんに、私が『別の時代から来た人間』とバレたけど秘密は守ってくれるそうです。
…………本当か?
ともあれ、紆余曲折あって第七師団に捕まった私。
でも手荒い扱いは受けなかった。
というか今、手荒い扱いを受けたらマジで死ぬかもしれん。
今、私は夜の山中で、40℃の高熱を出してます。
「梢さん、しっかりして下さい!」
月島軍曹は私を背負い、山道を物ともせず走る。
ほどなくして、松明の明かりがいくつも見えた。
第七師団の人たちだ。
「鶴見中尉殿! 梢さんがひどい高熱です!」
松明の明かりの中に、馬に乗った鶴見中尉が見える。
「分かった。すぐ病院に運べ!」
二度と会いたくなかったのになあ。
けど指示を受け、第七師団の人たちが、私の移送準備に動き出す。
一方、月島さんは私を一旦横にさせ、
「梢さん、目を開けて下さい。梢さん!!」
意識をしっかりさせるべく、呼びかけてくる。
「梢。私の声が聞こえるかね?」
鶴見中尉も来て、私の頬をぺちぺち。
やっと私は薄目を開ける。
「……梢さん!」
後ろから身を乗り出すようにする月島さん。
私の顔をのぞきこむ鶴見中尉は、
「梢。尾形百之助にヒドい目に遭わされたな。
君のお父上の大事な遺産を巻き上げ、病にかかったら見捨てて逃げるなど」
いやいやいや。尾形さんはそんな人じゃ――。
…………。
いや、状況だけ見たらホントにそんな感じじゃね?
何だかんだで、とっとと私を見捨てたし。
実は最初から演技で、体よく私を利用しただけだったりして……。
鶴見中尉は私の手を握り、力強く言う。
「奴は我々が必ず殺すから安心なさい」
なので私もその手を握り、
「はい、よろしくお願いします!」
「え」
と、月島軍曹。『何、このやりとり』みたいな顔。
背後の第七師団の皆さんも『そういう話だっけ?』みたいにザワザワ。
そして、
「鶴見中尉殿! 馬の準備が出来ました!」
そういうわけで、病院に運ばれた私であった☆