【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
「スマホ以外はもう全て処分します。リュックも燃やしますから」
「そうか。ならこれも燃やすんだな」
「だから勝手にリュックを漁らないで下さい!――て! え!?」
勝手に中を漁る山猫。奥から出したものをヒュッと火の中に入れる。
私の心臓もヒュッと鳴った。
あまりにもスローモーションに、それは焚き火の中に吸い込まれていった。
熊 よ け ス プ レ ー ! ! !
取り出そうにも、他の物の下に転がっちゃって取り出せない。
「うわああーっ!! 逃げて!! 今すぐ逃げてーっ!!」
私はリュックからスマホだけ出し、残りは放り投げ全力疾走。
「な、何だよ、いきなり」
よく分からない顔ながら、一緒に走り出す尾形さん。
そして十分走ったところで――後ろから爆音がした。
…………
私たちは離れた木立の中にいた。
尾形さんは双眼鏡から顔を離し、
「やっと鎮火したが……だが、派手に火が上がってたな」
スプレー缶を直火にかけたことで高圧ガスに引火し爆発。
周辺の木々に火がつき、小規模な山火事になってしまったのだ。
マジすみません!!
しかしあの規模では、リュックも残りの物も完全に燃えてしまっただろう。
これでスマホとお金以外、身一つになってしまった。
「手榴弾を持っていたならそう言えよ」
「す、すみません」
あんたが焚き火に投下したのに、なぜ私のせいのように言う。
まあLPガスもスプレー缶も発明される前だし、危険を分かれって方が無理か。
「おまえの時代には女子供でも手榴弾を持つのか?
平和な世界かと思ったがそうでもねえんだな」
「ははは……」
笑うしかねえ。
尾形さんはまだ、双眼鏡で付近を確認してる。
山火事を起こしたから、誰か来ないか警戒してるのだ。
「ここは町から離れてるし、誰にも見られてませんて。そろそろ行きましょう」
と促したが、
「…………」
「尾形さん?」
「そういうことか」
尾形さんはゆっくりと双眼鏡を下ろした。
「どうしたんですか? まさかあの西洋人、こんなとこまで追いかけてきたんですか?」
「いいや、代わりにとんでもねえ奴らに応援を頼んだようだ」
「誰が相手だろうと、尾形さんの敵じゃないでしょ?」
だが尾形さんは笑う。かすかに汗を浮かべ。
「第七師団だ」