【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
「誰にも言わないから。なあ梢」
「ダメなもんはダメっ!!」
ああもう! 一体どんなメールが来たのかチェックしたいのに、尾形さんがいるからスマホが出せないっ!!
『見せるくらいいいじゃん』とお思いかもしれんが、前回見せたのは私が”未来から来たと証明するため”である。
もう一回触らせ、形状や機能を覚えられ、何らかの形で後世に伝わっても困る。
「おまえ、俺を全く信用してねえな。こんな与太話、信じさせようとしても誰も信じねえだろ」
ようやく諦め、尾形さんは不満そうに私から離れた。
……プロポーズされといてアレだが、私たちの間に信頼関係ってあったっけ?
そんな調子で、何となくさっきの件はうやむやになり、気まずい流れは無くなったのだった。
これも山猫の作戦……なのか?
「でもリュックの物を燃やすのは賛成です。スマホを見られたのは大失態でしたからね。
もったいないですが処分しちゃいます」
そして私は焚き火をおこしてもらい、その中にリュックの中の物を投下していく。
衛生用品、美容品、応急処置道具――。
「ああああ~」
炎に包まれる財布を、私は未練がましく見る。引っ越し費用とか本当にどうしよう。
カード再発行っていくらかかったっけなあ。
ちなみに尾形さんは完全に人ごと。自分で『燃やせ』と言ったくせに、私が私物を燃やすのを興味深そうに見ていた。
「未来の写真ってのはやっぱり色がついてるんだな。
どうやって色をつけてるんだ? 画家が塗ってるのか?」
「ちょっとー!! 身分証を勝手に見ないで下さいよ!! というか塗ってるわけないでしょうが!!」
慌てて奪い取り、保険証などと一緒に炎の中に投げ込む。
カードはあっという間に溶け、形を為さなくなった。
――ん?
何だろう。今、頭の中から何か消えたような……。
疲れてるのかなと思いながら次を探そうとして。
「ていうか、身分証を撮影するの忘れてた……」
自分のアホさ加減に頭を抱えたくなる。
番号とか情報をスマホに残しとけば、再発行の手間が多少違ったのに……。
「撮影するのか?『スマホ』を出すのか?」
「出・さ・な・い!! いいから大人しく座ってなさい!!」
本当に興味津々だなあ。銃が好きだから、案外、機械類と相性が良かったりして。