【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
私が未来から来たと認めてから、×分後。
「返す」
尾形さんはすっごい渋々という感じで、スマホを返してくれた。
「もう触らなくていいんですね?」
受け取りながら尾形さんに念を押すと、彼は目元をマッサージしながら、
「……目が疲れた」
眼精疲労早いなっ!!
まあ尾形さんは、ずば抜けた視力の持ち主だ。スマホのブルーライトはきつかったね☆
……何か超大事なことを忘れてる気もする。
だが私は『金輪際、他人に触れさすまい』と急いでスマホをしまった。
そして尾形さんは銃を抱え直し、立ち上がる。
「そろそろ行くか、まだ奴らが追ってこないとは限らない。もう少し距離を稼ぐぞ」
「え?」
私はちょっと拍子抜けした。私、未来の人間ですよ?
もっと質問攻めにされると予想してたのに。
「色々、聞きたいんじゃないですか?」
「聞いてどうする。先のことを知ったところで、今日明日にも死ぬか分からねぇんだ」
……第七師団と敵対してるもんねえ。
私もリュックを担ぎ直して、慌てて尾形さんの後を追う。
彼は山道を歩きながら、
「だが、ようやく合点が行った。おまえの浮世離れした言動にも、時々生意気な態度を取ることにもな」
あ、あの……グサッときたんですが。
でも『私は百年後の人間だから~』という上から目線は、もしかすると時々やってたかもしれない。
今後はもっと謙虚に行こう、謙虚に。ドキドキ。
「で、梢が何十年か先の世界から来たとして、歴史でも変えるつもりか?」
尾形さんが先を歩きながら言った。やはり気にはなるらしい。
逆だ、逆!! 歴史を変えないため、今まで頑張ってきたんだから!
「違います。なぜだか、うちの庭が明治の北海道につながってたんで、遊びで何度か行き来するうちに戻れなくなって。
で、元の世界に戻るため、占い師のインカラマッさんを探しているんです」
「…………」
沈黙。
私のファンタジーな説明を、どうにか理解しようとしてる気配。
「え、ええと。とにかく歴史を改変しようとか、大それたことは考えてませんから!」
「本当か?」
「ホントです、ホント! どうにかして元の世界に戻ったら、明治時代には二度と来ないから、安心して下さい」
「…………二度と、来ない?」
尾形さんが立ち止まった。