【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
殿方二人は、完全にこちらの正気を疑う顔だった。
まあ現在の価値にして、十億円以上をふっかけてる計算だからなあ。
私は顔を上げた。
「払えないのなら、買わない方がいいのです。私だってLI○Eさえ無ければ……!!」
私もスマホを見られて、動揺で半ば錯乱していた。
だが西洋人のオッサンも目の光もヤバい。
「梢サン……五百円なら、今用意出来マス……だから、どうかさっきの機械を!!」
「端末あんしん補償金にすらなりませんね! ガラケーでも買ってなさいっ!!」
「よく分からんが……行くぞ、梢っ!!」
突然、尾形さんが私の手を引っ張って走り出した。
外人のオッサンは『Wait!』と慌てて私を追いかけようとした。
だが、その前に尾形さんが足でドアを蹴り開け、外に飛び出していった。
…………
…………
はあ、はあ、はあ……。
体力ついてきたと思ったが、重い荷物を抱えての全力疾走はこたえた。
牧場近くの山腹でどうにか小休止した。私は、汗だくになり呼吸を整えた。
うう。遠くの牧場には、草を食む牛さん馬さん。北海道っぽい光景だなあ。
だが私を探す人影がうようよしてる。
「梢。急いでここから離れるぞ。グズグズするな」
双眼鏡で追っ手を確認しながら、険しい顔で私を急かす尾形さん。
「舶来の機械だか何だか知らんが、面倒なことをしやがって……」
ワザとじゃないですよ。
「ここまで来れば大丈夫ですよ、尾形さん~」
「あいつの目を見ただろう。新しい玩具が欲しくて仕方が無いガキだ。
ああいう奴は、金でいくらでも人を雇える。おまえの機械の板を分捕るため、どこまでも追ってくるぞ」
そして歩きながら低い声で言った。
「前からおかしいと思っていたが、やはりおまえはただの女じゃねえな。
外国の諜報員か、軍需工場の開発兵器を横流ししてたのか?
いや、あの技術は……日本でもアメリカでもロシアでも、製造不可能だ」
そして立ち止まり、ついに私に聞いてきた。
「梢、おまえはいったい何者なんだ?」
これまでは金持ちの父が~とか遺品が~とか、苦しいながら説明が出来た。
だが、さすがにスマホは言い訳不可能だ。
なので私は親指を上げて、尾形さんに言った。
「カムイです☆」