【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
急げ急げ急げ!! 電源を切っ――。
「ん?」
通知ランプが光ってる。
そしてロック解除と同時に、ピロリン☆と通知音。
『新着メール1件』
え? 画面を確認する。圏外。だよね。
でも令和の世界にいたとき、新着メールなんて無かった。それより前から、サービス停止されてたのに?
ならどこから……誰から? 画面をスライドし、アプリを立ち上げ――。
「…………っ」
そしてハッとする。
「……Excellent」
スマホの操作をずーっと見てたオッサンが、震える声で言う。
カラーテレビを初めて見た人間。いやそれの比では無いインパクトを受けたご様子。
尾形さんは? めっちゃ瞳孔が細くなってる!
……尾形さんて無表情に見えて、意外と喜怒哀楽が分かりやすいのかなあ。
「梢サン!! それを! どうか! 売って下サイ!!」
さっきの比では無い興奮度で、オッサンに両手をつかまれた。
「Beautiful! Unbelievable! コレを祖国に持ち替えれば私は英雄になれる!」
ふ。お気に召していただけましたか。ステンレス製フレーム、OLEDディスプレイ、フェイスアンロック、タッチパネル――。
渡せるかっ!! 百年前の世界にスマホの技術が広がったら、歴史がしっちゃかめっちゃかになる!
ジョブズさんに申し訳が立たんわ!!
「百円!! いや二百円払いマス!!」
だが私はスマホを速やかにしまい、低く応えた。
「八万円……」
『は?』
殿方二人が言う。私は身体をわなわなと震わせ、おののきながら言った。
「今見せた機械の代金は八万円です……むろん税別。分割24回払い金利3%。
ただし周辺機器は別売り。毎月の『あんぜん保障』プランは新規契約時のみ有効……!!」
「いや……何言ってるのかさっぱり分からねえんだが」
「そうでしょうそうでしょう。二年契約なら月額がお安くなりますよーと言って、ユーザーを囲い込み、解約月にしか解放しない極悪商法!
翌月外せば大丈夫ですよ~と、いらんオプションを大量につけやがって!
気づくまで半年、馬鹿高い月額料金を払わされたわっ!!」
「やっぱ、どこかで頭を打ったか? おまえ」
「梢サン、この屋敷の建設費でさえ三万円デス。八万はさすがに用意出来まセン……」